13人が本棚に入れています
本棚に追加
/70ページ
過去・??
これが最後になるだろう。自転車にまたがったまま、波風一つ立たぬ湖水を見つめる。
荒くれのどうしようもない俺を救ってくれた。分厚い眼鏡の奥では、まっすぐな瞳で俺を見てくれた。
特別だったんだ。その声、仕草、表情全てが新鮮で嬉しくて、いつの間にか愛おしく思えて。どんなに俺が嘘をついて誤魔化しても、その偽りのない瞳は全く騙せなかった。きっと、本人は気づいていないだろうけれど。お前に会えて良かった。ありがとう。
あの日、あの時。後悔していない。きっとこの先、例えば10年後に思い出したとしても、今日この日をやり直したいとは思わないだろう。退屈な毎日が続いていたある日、あいつに出会えて良かったと、心の底から思う。
最初のコメントを投稿しよう!