31.リーザ、匂いフェチを告白する。

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31.リーザ、匂いフェチを告白する。

「母上、使用人を連れてきました」 建国祭を終えると約束通り、レオが使用人を連れて邸宅にやってきた。 「マナーやダンスの家庭教師も連れてきましたが、無理のない程度に活用してください。母上は頑張りすぎてしまうことがありますので」 彼が1人1人を紹介してくれる。 「嬉しい、マナーやダンス一度ちゃんと習いたかったの」 私は笑顔で返した。 マラス元子爵は公の場には必ず本命の第1夫人を連れて行った。 「貴族になったのだから、ダンスやマナーを習いたい」 そう彼に訴えたが、必要ないと断られてしまったのだ。 これで来年はエドワード様とちゃんと踊れそうだ。 「あの、早速だけどこれを貼り替えてくれる?」 私はメイドに紙の束を渡した。 行政部で仕事の指示を出すために、必要な仕事の内容を覚えようと思って邸宅の壁に紙に書いて貼っていたのだ。 そうでもしないと、私はすぐに忘れてしまう。 「今、壁に貼ってあるのはもう覚えたの」 私は得意げにレオに言った。 メイドたちは黙々と紙を貼り替えはじめる。 「母上は本当に努力家ですね。尊敬します」 レオが私を尊敬するところなんてないはずだけれど、この時の彼の言葉は信じられた。 「ありがとう、それよりレオは最近は何をやっているの?」 私はレオに尋ねた。 建国祭で忙しいとはいえ、天才レオのことだから何かしてそうだ。 「紳士服事業をする予定です、お姉様がファッション事業の一部を譲渡しているクレア嬢と組んでペアルックの販売も予定しています」 デザイン画を見せてくれながら、レオが説明してくれる。 「これ、レオが書いたの?建国祭のアーデン侯爵とレオもペアルックでかっこよかったよ。これ、兄弟お揃いとか親子お揃いとかも作って欲しい」 私はデザイン画があまりに洗練されていて驚愕の声を上げた。 「僕が描きました。皇帝陛下とお姉様を想定して書きましたが、確かに兄弟や親子のお揃いがあっても良いかもしれません。母上に見せてみてよかったです」 レオがすぐに、男物の親子お揃いと、兄弟お揃い服をデザインして描く。 そのスピードとデザインに、私は自分が潰していたかもしれない彼の才能を知った。 「すごいね、レオは、優しくて立派で。私といたらレオの才能を潰していたよ。立派な両親の元に行けて才能をいかせてよかったよ」 私は思わず呟いていた。 「もし、僕が優しくて立派な息子に見えるなら、母上も優しくて立派な母親ですよ。お姉様のことを優しいですねと言ったら、それは僕が優しいからそう見えると言われました。僕は今母上の言葉を聞いて、その意味が分かりました」 レオが言ってくれる言葉が嬉しい。 でも、その言葉に恥じない人間になりたい。 「これって、女性もののドレスにはポケットはないの? 武器とか入れたいんだけど」 私は、少し泣きそうになりながらもレオに尋ねた。 「母上、武器は必要ないですよ。周りの騎士たちが母上を守ってくれます」 レオが試しにポケットのあるデザインを描きながら言った。 「でも、アーデン侯爵令嬢は絶対武器持ってるよ。どこに隠しているかは謎だけど、隠しポケットつけた方が喜ばれるよ」 私は、彼女がマヒマヒ針を投げた時のことを思い出しながら言った。 「確かに外観に支障のないように利便性を高める意味でポケットはあっても良いかもしれません」 レオが自分の描いたデザインを見ながら言った。 「それにしてもお姉様って、この間はエレナって呼んでなかった?」 私は疑問に感じたことを聞いてみた。 「今日は彼女の弟役の日なんです。日によって兄役や弟役をしています」 レオが説明してくれるが、私はその楽しそうなごっこ遊びを自分もしたくなってしまった。 「今日は私が娘で、レオが35歳のお父さん役でやろう」 私の唐突な提案に彼は少し驚いていた。 「母上は18歳の役ですよね。35歳の父親に18歳の娘は無理がありますよ」 レオが言った言葉に、私が自分の手記に私は永遠の可愛い18歳だと書いたことを読まれたことに気がついた。 それにしても18歳で成人して結婚してからしか子供を作ってはいけないなんて彼も随分、帝国貴族に染まったものだ。 「リーザはお父様が婚前交渉で作った隠し子です。お父様、私からお願いがあるのですが聞いてもらえますか?」 私は強引にもこのごっこ遊びをすすめるために言った。 ちなみに18歳の私はもっと生意気だったが、レオの娘なら性格も可愛い子なのではと思ったら咄嗟におかしなキャラになってしまった。 私には天才レオにどうしても作ってもらいたいものがあったのだ。 「リーザが僕にお願いしてくるなんて珍しいね、言ってごらん」 レオが明らかに30代の表情をして言ってきた、彼の適応力には脱帽する。 「アーデン侯爵はな何の香水を使っているのでしょうか? 私はあの香りが欲しいのです」 私は、アーデン侯爵の王子っぽい香りが好みのドストライクだったのだ。 あの香りををほぼ無臭なエドワード様につけて自分好みに彼をカスタマイズしたいと考えていた。 「アーデン侯爵は騎士だから、香水は使ってないよ」 レオが大人の微笑みで言ってくる。 「体臭なんですか?リーザは匂いフェチなのです。お父様は私が喉を痛めた時、薬を調合してくれました。アーデン侯爵の匂いを調合してください」 私はここぞとばかり頼んだ。 母親として息子に頼む内容としては痛いが、今は娘。 可愛いお願いだと聞いてもらえるに違いない。 「お父様なら香水のお店を開けるのではありませんか?私、アーデン侯爵の香りが売り出されたらお小遣いを叩いて買いに行きます。男性だけでなく、女性にも用途のある王子の香りです」 私が一番可愛く見えるお祈りのポーズでレオにお願いをした。 「リーザのような匂いフェチの需要を考えると香水事業をしてみようかな。でも、リーザにはもちろん侯爵の香りをプレゼントさせてもらうよ」 私は思わずガッツポーズをした。 「それにしても、お父様は多才なのですね。帝国に来て本当に良かったです」 私はレオがデザインも描けて、調香もできることに感動しつつも、これらの才能がエスパルだと殺されていたことに気づいた。 「母上が、帝国に連れてきてくれたんですよ」 突然、父と娘ごっこを終えて語りかけてくるレオに驚いてしまった。 「違うよ。全部レオのおかげなの。私はレオが生まれるまで、苦しくて息もできなかった。レオが空気を運んできてくれたから、帝国の試験も受ける勇気ができたんだよ。レオが運んでくれた空気を当たり前みたいに思ってた。ありがとう。私はあなたのお陰で息ができるようになったの」 思わず、レオにいったら困ってしまうような本音を言っていた。 「母上、僕はいつまでも母上の当たり前でいたいです」 レオが笑いながらこたえた。
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