ひまわり

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ひまわり

本村若葉(もとむらわかば)と良一、そして秀華の3人は同じ児童養護施設【ひまわり】で育った。 若葉は2歳、良一は5歳年上だ。 秀華が4歳で施設に預けられた時には、若葉も良一も、既にひまわりで暮らしていた。 最初に話しかけてくれたのは若葉だ。屈託のない笑顔で「一緒に遊ぼう」と。 それからずっと妹のように接してくれた。いつも、どんな時も味方でいてくれた。 秀華の父親が犯罪者だと知ってからも、それは変わることはなく、より一層秀華を気にかけてくれた。 良一も同じだ。良一は頭が良く、勉強嫌いの秀華が理解できるように、丁寧に教えてくれていた。 「勉強は裏切らない。知識は自分を守る武器だ。だから、嫌いでも頑張って勉強するんだ。将来、そうやって学んだことが、きっと秀ちゃんを助けてくれるから」 良一はいつも言っていた。 無知だった親が知人の連帯保証人になり、借金取りに追われた末に無理心中。たったひとり生き残った良一だからこそ、そのことを身に沁みてわかっていたのだ。 良一は14歳で里親に引き取られ、ひまわりを出ていった。その後、有名進学校に進み、国立大の医学部を卒業。今は救命救急医として篠上総合病院で働いている。 四年前、院長の一人娘と結婚し、婿養子になった。 3歳の息子がいる。将来は篠上総合病院の院長だ。 八年前、昏睡状態に陥った若葉をずっと診てくれている。 緊急搬送された先が良一のいるこの病院だったことは奇跡だった。
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