アザミの誕生

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秀華は高校入学と同時に独りアメリカに渡り、長尾の知り合いという女性、シンディーの元で生活をしながら、システムエンジニアのスキルを磨いた。 シンディーは表向き、フリーランスのセキュリティエンジニアだ。自ら開発したシステムで企業をサイバー攻撃から守り報酬を得ている。 そしてもう一つの顔、 コードネームは【Blue blood】 世界的ハッカーの一人だ。 街を歩けば、どこぞの上品なマダム。一見誰もハッカーだとは思わないだろう。 シンディーは厳しい。ミスは許されない世界だからだ。それはエンジニアとしてのスキルも会話のスキルも容赦はなかった。 コーディングの際、美しいといわれるコード以外は容赦なく淘汰される。 シンディーのスパルタに食らいつき、通信高校の卒業証書をもらう頃には、セキュリティエンジニアとしても、大企業のセキュリティを任されるほどになっていた。 そして、秀華のもう一つの顔、 コードネーム【Thistle(ティスル)】 施設で生活していた時、秀華は河川敷で可愛らしい花を見つけた。若葉にプレゼントしようと考え、花を摘もうと握りしめた瞬間激痛に襲われた。棘で手を痛めてしまっていたのだ。 そしてそのまま職員に連れられ、病院に駆け込んだ過去がある。 後にその花が "アザミ" だということを知った。 コードネームを何にしようか考えた時、この出来事を思い出し即断した。 "迂闊に触れれば傷を負う" そうしてThistle=アザミは誕生したのだ。 サイバー攻撃を受け、何十億にも上る損失のリスクを考えなければならない企業にとって、シンディーや秀華の存在は必要不可決。 決して侵入を許さない。侵入しようとすれば、相手のシステムを破壊してお返しする。 完璧なセキュリティに良心的な報酬額。 この業界で、シンディーと共に、秀華は圧倒的な存在感を放っていた。 契約は一年単位。事前に企業のサーバーに侵入し、ブラックではないことを確認してから契約を結ぶ。ブラック企業を守る義理はない。 気づけば報酬は億単位となっていた。
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