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窓際の席に陣取り、オレンジジュースを飲みながら若葉を待つ。しばらくすると、ジーンズ姿の若葉が秀華を見つけ、軽く手を振った。秀華も笑顔で手を振り返す。
「お待たせ」
「若葉、お仕事お疲れさま」
「うん、ありがと。秀ちゃんオレンジジュース飲んでたのね」
「うん」
「相変わらずオレンジジュース好きだね」
「覚えててくれたの?」
「もちろんよ」
若葉は席に腰掛けると、メニューに目を通し、アールグレイを注文した。
運ばれてきた紅茶のカップを持つ手はしなやかで、口につける大人っぽい仕草に見惚れてしまった。
「どうしたの?」
「若葉、素敵な女性になったね」
「え⁉︎ な、なに、突然!」
「昔はリンゴジュースだったのに」
「うふふっ、そうだったね」
穏やかに笑う表情も色香が漂っている。
『男がいる、のかな……』
直感だ。
「若葉、彼氏いる?」
唐突な問いかけに咽せてしまったようだ。
「い、いきなり?」
「答えたくなければ答えなくていいよ」
「隠すことでもないし、白状します。いる」
直感は侮れない。
「幸せ?」
「うん」
「そっか」
少々寂しさはあるが、若葉が幸せならばそれが一番だ。
「私、若葉の家行っていいの? 彼氏、来るんじゃないの?」
「大丈夫よ、今日は飲み会なんだって」
「そうなんだ」
「私、肉じゃが作ったんだけど、作りすぎて何日も食べなきゃいけなくなってて、秀ちゃん、よかったら消費するの手伝ってくれない?」
「食べたい! 肉じゃが食べたい! 若葉の作った肉じゃが全部食べたい!」
「全部って、量見たらびっくりするかも」
「大丈夫、若葉の作ったものなら底なしに入る自信あるし、お腹も壊さない」
「うふふっ、ありがとう秀ちゃん」
若葉が紅茶を飲み終えるのを待って店を出た。
電車に揺られ30分。改札を抜け、徒歩10分ほどの場所に若葉のアパートはあった。
年季の入った木造二階建。
リフォームは済んでおり、和室と洋室に3畳ほどのキッチン。
古いながらも、若葉らしさを醸し出した清潔ですっきりとした部屋だった。
ただ、一階の角部屋だったので、でセキュリティ面には不安を覚えた。
だが、若葉は
「周辺はファミリー層が多く住んでるし、鍵も防犯用にもうひとつつけているから大丈夫だよ」
秀華の不安をよそに微笑んだ。
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