若葉という存在

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秀華はふと足を止める。 若葉の彼氏ってどんな男なんだろう。顔だけでも確認したい。 抱いた感情を抑えることができなかった。 踵を返し、アパートの玄関が見える位置に身を隠した。 しばらくすると、背の高いスーツ姿の男が玄関前に現れた。 秀華は構えていた携帯のシャッターを押す。 まるで探偵だ。いや、もはやストーカーだ。 しかも、盗撮。 『私何やってるんだろう……』 それでも、男から目を離せない。 男がインターホンを押すと、若葉が姿を見せた。蕩けそうな甘い表情で微笑んでいる。男が若葉の腰に手を回し軽いキスを交わす。二人の姿はすぐに部屋へと消えた。 『あれが恋する女の表情なんだな……』 秀華は項垂れた。だがすぐに顔を上げ、 『あいつ、絶対許さない。若葉を傷つけたりしたら絶対に許さない。でも、幸せにしてくれるんだったら、仕方ないけど全力で応援する』 誰もいない玄関を見つめながら、秀華は思いを巡らせていた。
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