若葉という存在

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無意識に良一との通話を切ってしまっていた秀華は、ふらふらと玄関に向かった。慌ててシンディーが秀華の腕を掴む。 「Where are you going? 」 (どこに行くつもり?) 「I should go to the hospital!」 (病院に行かなきゃ!) 「What ⁉︎ No, no! Hey, hey, hey look!」 (なんですって⁉︎ だめ、だめ! ねぇ、ねぇ、ねぇ、ほら!) 「What ? Wakaba’s waiting」 (何? 若葉が待ってるの) シンディーの手を振り払い、玄関の取手に手をかけたその時、室内に緊急を知らせるアラーム音が鳴り響いた。システムへの侵入を知らせる警報音だ。 気が動転する。 なんとかしなければ! 慌ててパソコンに駆け寄りキーボードを操作するも、 「あっ!」 ファーストセキュリティの侵入を許してしまった! 秀華はもはや冷静さを失っていた。 すかさずシンディーが対処する。セカンドセキュリティ侵入の前に食い止めることができた。アラーム音は止み、最悪の事態は免れ、安堵の息が漏れる。 だが、秀華の手は震えていた。手だけではなく、震えは全身に広がった。息も苦しい。 「Shuka?」 シンディーは秀華の顔を手で包み込み、焦点の定まらない秀華の視線を自分に向けさせた。 「Hey Shuka,Hey」 (ねぇ秀華、ねぇ) それでも震えが止まらない。 シンディーは秀華の両腕を力強く掴んだ。 「Pull yourself together !! 」 (しっかりしなさい!! ) 喝を入れるような力強い声だった。 秀華の目に涙が滲む。瞬きと同時に溢れ出し、声を上げて泣いた。そんな秀華をシンディーはずっと抱きしめていた。
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