若葉という存在

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電話はすぐに繋がった。 「もしもし、秀ちゃん?」 「うん」 「大丈夫か?」 「うん、途中で切ってごめんなさい」 「謝らなくていいよ。俺もストレートに伝えてしまったから……ごめんな」 「ううん、ねぇ、良くん、若葉は?」 「生きてるよ」 「ホント⁉︎」 「でも、目を覚ますことは厳しいかもしれない。運ばれて来た時には心肺停止状態で、蘇生したけど、低酸素脳症が長く続いていたから……」 「植物状態ってこと?」 「そう、だね……」 「でも、生きてるんだよね」 「あぁ、生きてる」 「園長先生に遺書が届いたって言ってたよね、何が書かれてたの?」 「命を粗末にしてごめんなさい。約束守れなくてごめんねって、秀華に伝えてくださいって」 秀華の目から涙が溢れ出す。 良一に悟られないように、呼吸を整えた。 「若葉、ずっと篠上総合病院で診てもらえるの?」 「俺はそうしたい。院長には頼んでみるけど、長期になると金銭面でも厳しいかもしれない」 「お金は私が払う」 「え⁉︎」 「入院費、私が払う」 「な、何言ってんだ⁉︎ 秀ちゃん、自分の生活だってあるだろう?」 「私、お金持ちなの」 「は?」 「宝くじ当てたから」 「・・・」 「もしもし、良くん?」 「宝くじ当てたって……」 「宝くじ当てたことは誰にも言わないでね。私、若葉と約束してたことがあるの」 「約束って、若葉が守れなくてごめんって言ってた事か?」 「うん、そうだよ。若葉、将来自分のお店を持ちたいって言ってたから、私がお店を買ってあげるって」 「そんな約束してたのか……」 「だから、もともと若葉のために使おうと思ってたお金なの。使い道が変わっただけ」 「そう、なのか?」  「うん、そう。だから、若葉をお願い。良くん、ずっと篠上総合病院にいるんでしょう?」 「いるよ。俺はここで救命医になるから」 「だったらお願い」 「……わかった」 「ありがとう、良くん」 「何かあったら連絡する。この番号でいいんだよな?」 「うん」 「秀ちゃん、本当に大丈夫か?」 「大丈夫。私、まだしばらく若葉の顔見に行けないけど、必ず行くから。入院費の金額、ショートメールでもいいからちゃんと教えてね」 「わかった」 「良くん、良くんがいてくれてよかった」 「一応、二人の兄ちゃんだって思ってるから」 「ありがとう」 「あ、呼び出しだ。じゃあ、俺戻るわ」 「うん。身体、気をつけてね」 「わかった。秀ちゃんもな」 「うん」 通話を終えた秀華は軽く息を吐いた。
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