若葉という存在

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「宝くじ当たったって何だよ」 長尾がククッと笑う。 「だって仕方ないでしょ、素性明かせないんだから」 「まぁ、いいんじゃねえか。金はあるんだから」 「うん」 「秀華、もう大丈夫だな?」 「うん。私、絶対突き止める。若葉に何があったのか」 「暴走するなよ」 「しない。でも、こっちで調べられることは調べていいでしょ?」 「いいよ。ただし、情報は共有すること」 「うん、わかった」 「で、最初に何を調べるつもりだ?」 「若葉の携帯」 「携帯?」 「うん」 「あぁ、交友関係か」 「若葉と会った日、番号教えてもらったの。一度も連絡できずにいたけど」 「秀華、グッジョブじゃあねぇか」 「うん。まずは、あのいけすかないイケメンを調べる」 「若葉の家にいる時電話がかかって来たから、その時の日時もわかるし、半年前だからサーバーに残ってると思うんだよね。残ってなくても復元するだけだけど」 「俺たちにしか出来ないやり方で、だな」 「うん」 「頼もしい弟子だ」 「仕事も最後までちゃんとやるから。最後の契約が終了する十ヶ月後、私日本に戻る。でも……」 「どうした?」 「私を信頼して仕事を任せてくれているのに、なんだか放り出すみたいで申し訳ないなって思って……」 「心配すんな。何のために契約書があるんだ?」 「うん」 沈んだ表情の秀華の肩に、側で見守っていたシンディーはそっと手を添えた。 「You can count on me 」 (私を頼っていいのよ) シンディーの大きな優しさが、一層身に染みた秀華だった。
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