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秀華がモニターを繋ぐと長尾はすぐに反応した。
「何か掴んだか?」
「ちょっと気になることがある」
「なんだ?」
「あいつ、いけすかないあいつ、日帝銀行だった」
「そうか」
意外にも反応が薄い。
「もっと驚くと思ったんだけど」
「・・・」
「師匠?」
黙り込んだ長尾の眉間には、深い皺が刻まれている。
普段見ることのないその表情に、秀華は胸騒ぎを覚えた。
少しだけ無言の間が生じた後、長尾は意を決したように、モニター越しに秀華を見つめた。
「俺は、お前に謝らなければならない」
「え?」
「俺がきちんと話をしていれば、若葉さんはこんなことにならなかったかもしれない」
秀華の思考が一瞬停止する。
「どういう、こと?」
「料亭、若葉さんが働いていたあの料亭は……」
「料亭? 料亭がどうかしたの?」
「俺たちの同僚だった女が女将をしている」
「同僚?」
「あぁそうだ。あの女は、五十嵐が横領で捕まってすぐ、銀行を退職し店をオープンさせた。赤越サヨリ、料亭の女将、あの女も横領に絡んでいる。俺はそう踏んでずっとあの店をマークしていた。" 料亭さより" あそこは悪の巣窟だ。それをわかっていて、お前に言えなかった。だが、話すべきだったんだ……」
そうかもしれない。長尾が早く教えてくれていたら、状況は変わっていたかもしれない。けれど、それはタラレバの話だ。あの時、長尾は黙っていることを選んだ。それは、そうした方が良い、そう判断したからだ。何故なら……
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