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「東堂彰太郎のお気に入りだ」
「それ誰?」
「日帝銀行副頭取だ。五十嵐の上司だった男。五十嵐を陥れた張本人だと俺は思っている」
「お父さんはそいつのせいで捕まったってこと?」
「あぁ、そうだ。愛人の赤越サヨリを使ってな」
「愛人! 女将って愛人なの⁉︎」
「あぁ」
「愛人と結託してお父さんを? 」
「そうだ」
「……クソだ! そいつらクソすぎる!」
「あぁ、クソだ。クソ以下だ。奴らのせいで人生を狂わされた人間がどん底の苦しみを味わっている中、奴らはのうのうと生き、なんの罰も受けずにちゃっかり高級料亭の女将におさまりやがった。東堂に至っては副頭取だ。それでも足りないのか、頭取を狙っているらしい。だが、そうはさせない。奴らを社会から抹殺する。それが俺の使命だ」
「師匠、師匠もそいつらのせいで苦しんだの?」
「そうだな。俺だけじゃない。五十嵐も、真子さんも、その子どものお前も、奴が奪ってきたものは計り知れない」
「師匠が一番懲らしめたいのは東堂彰太郎なんだね」
「そうだ」
「だったら、外堀から埋めてく?」
「外堀?」
「高遠理人だよ。東堂のお気に入りなんでしょう? それに、今はどうだか知らないけど、若葉の彼氏だった男だもん。若葉のお腹にいた子も、もしかしたら高遠の子どもかもしれないし」
「ちょっと待て! 若葉さんは妊娠していたのか?」
「うん、携帯調べてたらそこまでわかっちゃた。そこまでじゃないな、流産までね」
「流産⁉︎」
「うん。自殺を図る直前、産婦人科を受診してた。サーバーにお邪魔してカルテ見ちゃった」
「そうだったのか……」
「高遠について調べたいことが山ほどある。もしかしたら、高遠も東堂にとっては駒の一つなのかもしれない。だけど、その駒を一つ一つ潰していけば、丸裸になるよね。時間かかるかもしれないけど、確実に追い込めるんじゃないの?」
長尾はフッと笑った。
「さすが五十嵐の子だな」
「お父さん?」
「あぁ、今のお前は五十嵐によく似ている。俺が東堂のせいで追い詰められた時、手を差し伸べてくれた五十嵐に。……俺、五十嵐にぶん殴られるかもしれないな。秀華を引き摺り込んでんじゃねぇって」
「じゃあ、私も怒られるね。共犯だもん」
「共犯、か…… 後悔してるか?」
「ううん、全然。初めてアプリを作った時、防犯カメラの映像ハッキングしたでしょ、もうその時点で逮捕案件だし、後悔のこの字もないよ」
「そうか…… 」
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