98人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
「師匠、私を迎えに来てくれてありがとう」
「俺は礼を言われるようなことはしていない。お前を引き取ったのも自己満足だ。五十嵐は娘の穏やかな生活を望んでいたに違いない。だが、俺は……」
「お父さんがもしそう望んでいたとしても、私は違う。穏やかな生活なんて合わない。私、今の人生気に入ってるよ」
「秀華……お前って娘は……」
長尾は呆れたように笑みを浮かべた。
「ねぇ、師匠、私も日帝銀行調べたい」
「ダメだ!」
一瞬にして緊張をはらんだ空気が、秀華を凍てつかせた。
「最近厄介なシステムに移行してな、下手をすれば自爆する。お前の腕を信用していないわけじゃないが、リスクを負うのは俺だけで十分だ。俺に任せろ。お前は、日本に戻るまで本来の仕事に集中するんだ」
「……」
秀華は眉根を寄せた。
「そんな顔してもこれだけは譲れないからな」
「わかった」
渋々了承すると、
「いい娘だ」
宥めるように返ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!