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 「子供みたいに単純だからこそ怪異への対応もうまくいく、ということもあり得る。それは、限定的長所と考えてもいいかもしれんな」  「それって褒めているんですか、それともディスっているんですか?」  ついていきながら問いかける雅。  「どっちでもないよ。いや、どっちでもあると言えるかな? ただ、私が目指す班にとっては貴重かもしれん」  車に着き、ドアに手をかけながら織田が振り返る。  目指す班――彼は常々、未解決事件を減らしていきたいと言っていた。そして、そのような難しい事件の裏には「人ならぬもの」が絡むことが、往々にしてある。だからなのか、織田は怪異な事件を自ら担当するようになっていった。  そして、専門の部署を設置するよう上に訴えかけ、ようやく「特異未解決事件捜査班」という名称で、県警刑事部捜査課内に立ち上がることが決定した。  正式に動き出すのはまだ先だが、その人選を厳密に行うように、と指示されているらしい。  「スカウトですか?」  雅が反対側のドアに手をかけながら訊く。  「君、なかなか図々しいな? 入れてほしければそう言いたまえ。考えてやらんでもない」  ふふん、と笑みを浮かべながら後部座席に乗り込む織田。  素直に、うちの班に来いって誘えばいいのに……。  溜息をつき、雅も乗り込む。そして大きな違和感を覚えた。  「あの、織田警部?」  「なんだ?」  「私、着替えるんですけど」  「そうか。かまわんよ、どうぞ」  「私がかまうんですっ! さっさと降りてください!」  「寝ていればいいだろう?」  織田がシートに背中を預けて目を閉じる。  「いいわけないっ! さっさと降りないとたたき出しますよっ!」  雅が拳を握りしめながら言うと、織田は這々(ほうほう)(てい)で飛び出していった。
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