179人が本棚に入れています
本棚に追加
ふと、不安な気持ちがわき上がってきた。それは次第に膨らんでいく。
木々の合間から月の光がさし、岸本の影が伸びる。なぜかそれが、ここに留まるなと訴えかけているような気がした。
今日は諦めて、もう戻るか……。
そう思ったところだった。ガサリ、と木の枝が音をたてる。
なんだ?
振り向くが、何もいない。
しかし、気配はあった。誰か、いや、何かが蠢いている。
ふ……く……め……つ……。
地の底から響くかのように、そんな声が聞こえてきた。
え?
ギョッとして視線を巡らせるが、何も見えない。
ふ、く、め、つ……。
ふく、め、つ……。
不気味な声が続く。耳の奥まで届いてくる。不快だ。
ふくめ、つ……。
ふくめつ、ふくめつ……。
な、なんだ?
ゆっくりと後退る岸本。走り出したいが、そうしたら恐怖の元である何かが一気に襲いかかってくるような気がして、できない。
ふくめつ、ふくめつ……。
別の方からも聞こえてきた。複数の何かが、その呪文のような声を発している。
ふくめぇーーーーーつ!!!
最後は木々を揺るがすかのような、大きな叫びだった。
「ひ、ひいっ!」
岸本は思わず悲鳴をあげる。
すると、左右の大きな木の陰から、スッと何かが4体現れた。
骸骨だ――。
最初のコメントを投稿しよう!