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大変な1日だったなぁ……。
帰路につきながら、北見響希は溜息をついた。
何気なく振り返る。もちろん、すでに職場である神奈川県警座間警察署の建物は見えない。しかし、気持ちはそちらに向けていた。
昨夜のことなのでもう一日前になるのだが、座間市内の林の中で変死体が見つかった。殺人事件の可能性が高い。
被害者はジャーナリストらしい。かなり酷い状態だったという。
響希は交通課勤務なので捜査に参加はしていないが、近来まれに見る事件のため支援体制には加わっている。情報収集を手伝い、捜査本部立ち上げの際には署内の整理にも尽力した。
殺人となればこの市内で起こるのも久し振りだし、これほど大々的な捜査本部ができるのを見たのは、勤続5年目にして初めてだ。
県警の刑事部から精鋭の捜査員達が大挙して押し寄せ、一気に緊張感が増した。
ふと、幼なじみである島本一馬のことを思い出す。
彼も県警の捜査員だ。ただ、刑事部ではないらしい。どんな捜査に加わっているの、と聞いたことがあるが、言葉を濁された。それを考えると、たぶん公安関係だろう。
17年前、彼と一緒に忍び込んだ蔵での出来事が脳裏をよぎった。
あの時、自分達が蔵を開けてしまったがために、男性2人が何か金目の物があったら盗み出そうとして忍び込んだ。そして、あれに惨殺された。
今回の死体のことは、捜査本部に入っていないので詳しくは知らないが、どこか似ているような気がした。更に、2年前のあれも……。
まさか……。
首を振って、不吉な思いを打ち消した。
一馬とのことに記憶を戻す。彼は幼なじみであり、中学の頃までよく遊んだ。その後、住んでいた村が廃れ、それぞれ別の場所へと引っ越すことになったが、連絡はとり合っていた。
別に告白し合ったわけではないが、一時期は恋人同士のようでもあった。
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