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地方の警察署で、しかも夜間であるにもかかわらず、足を踏み入れると騒然とした雰囲気が伝わってきた。重大事件が発生したのだから、当然と言えば当然だろう。
島本一馬は、行き交う座間署員達の中に思わず響希の姿を探してしまって苦笑する。
職務中に何を考えているんだ、俺は!
胸中で自分を叱責すると、先輩である田上一義を見た。
「どうします? 一応署長室に挨拶に行きますか?」
「いや、捜査会議に参加すればいずれ嫌でも顔を合わせる。署長さんにはその時でいいさ。どうせ刑事の連中には煙たがられるだろうから、そういう機会は少ない方がいい」
さすがにベテランでもある田上らしい返答だった。
2人して捜査本部へと向かった。数人が怪訝な目を向けてくる。
本部の上座と言える箇所へ行くと、おそらく座間署の刑事課長と思われる人物に向かい、田上がちょこんと頭を下げた。
「県警警備部から来た田上と島本です。この事件について情報をいただきたいので少し動きますが、気になさらずに。もちろんこちらで持っている情報で必要なものはお伝えするようにします」
「警備部……」相手が顔を顰めた。「何か公安が関わるようなことがあるのか?」
「まだわかりません。それを明らかにするために来ました。とりあえず、鑑識の話を聞かせていただきます」
田上のその言葉に、相手はどうぞと顎で示した。ぞんざいな態度だが、そういうのには慣れている。
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