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 一馬と田上は、鑑識から被害者の状況について説明を受けた。  両手足が引き裂かれ、首もえぐり取られ、バラバラ死体となっていた。しかも、ほとんどの血液が抜かれている。  同じだ……。  これまで一馬達の班が調べてきた一連の事件の被害者と、酷似している。  捜査本部では殺人事件である可能性が高いと見て、猟奇的な人物、複数の凶悪犯罪グループ、そして野生動物、とあらゆる犯人像を視野に入れている段階だった。  田上がそれらを、こちらの班の上司に連絡する。  その横で、一馬は不穏な思いに囚われる。  17年前、自分と響希が体験した出来事――。  あの時の男達も、悲惨な状態で殺されていたという。  それも同じなのか?  そして、2年前、響希が巻き込まれたあの事件も……。  想像が膨らんでいきそうで、一馬は首を振る。  客観的な事実を積み重ね、事件の本質を見極める。それが大事だ。安易な想像は過誤を招く。  そう自分に言い聞かせながらも、一馬の胸にはいくつもの不安と疑問が漂い続けた。
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