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 「元気だった?」  「う、うん。あなたも元気そうね」  当たり障りのない言葉をかけ合う。しかし、その後が続かない。懐かしい相手との突然の再会が意外な状況すぎて、戸惑っていた。  「もしかして、あの事件の捜査?」  チラリと捜査本部の方を見てから尋ねると、一馬は応えに困ったように言葉を探す。そして軽く頷いた。  「まあ、そうとも言える。この事件だけについて調べるわけじゃないんだけどね」  曖昧な返事だが、響希は合点がいった。彼はおそらく公安捜査官だ。しかしそうなると、この事件の裏には何か複雑なことが隠されているのか?   「あ、あの……」  何かを言いかけて口ごもる一馬。響希はすぐに彼の懸念がわかった。なので、明るい口調で先に話し出す。  「大丈夫。もう引きずってないよ」  「え?」  「2年前のあの事件のことでしょ? 引きずってたら警察官やってないって」  事件後すぐ、彼の方から連絡があった。その時にも同じように応えたし、以降も普通に会話していたが、やはりまだ心配してくれていたのだろう。今回の事件がそれを膨らませたのかもしれない。  「そう。それならいいけど……」もっと話を続けたいが同時に捜査本部の方も気になる、という感じだ。意を決するように響希を見た。「今度時間を見つけて、ゆっくり話さないか?」  「う、うん、そうだね……」  しっかりと視線を向けられて戸惑いながらも、頷いた。  「じゃあ、連絡する」  そう言って一馬は、名残惜しそうな表情を残し歩き出した。  響希は否が応でも2年前のことを思い出してしまう。
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