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彼女を襲った3人組の強盗殺人犯が惨殺されたが、状態が酷似している。
同じ何者かの犯行なのか? そうだとすると、なぜそんな連中を襲ったのか?
一馬の所属する班内でも、疑問として残っている。
しかし、彼にはもう1つ大きな懸念がある。それは班内にはまだ知る者はいない。
17年前のあの蔵で見つかった、2人の男の死体。それも酷い状態だったと聞く。もしかして……。
響希はどう思っているだろう?
想像にふけっていると、不意に隣に立つ田上が肘で突いていた。
「珍しい人がいるぞ」
彼が上座の方を顎で示す。一馬も視線を向ける。
「あれは確か、織田賢一警部?」
「ああ。以前は敏腕刑事だったらしいが、今は妙な、なんか怪異とやらが関係するような事件を担当することになったそうだ。もしかして、この事件の裏にもそんなのがいる、って考えているのかな?」
田上が怪訝そうな顔になった。
「怪奇現象と言えなくもないですからね、あんな惨殺死体……」
肩を竦めて応える一馬。内心は不安の波が起きている。
「息子さんは我々の上司様だからなぁ。もしかしたら厄介なことになるかもしれないな」
小声でぼやくように言う田上。
キャリアで優秀な上司である織田志郎は、相手が与党民事党内でも力のある議員のため尻込みしていた他の上層部に強く意見し、捜査を認めさせたという。正義感が強いようだ。なので一馬としては、ある意味尊敬もしている。その彼が、たまに父親の依頼を受けて警備部の人員を動かすこともある。
本来認められるものではないが、結果的に事件解決につながっていることが多いらしく、黙認されていた。
もしかしたら今回も? いや、まさかそこまでは……。
響希との再会、過去の奇怪な事件、そして織田警部が関わってきそうなことも含め、何か大きな渦に巻き込まれていくようにも感じられる。
不穏な思いを断ち切るように、一馬は大きく息を吐き出した。
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