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ゴクリ、と唾を飲み込んだ。嫌な予感がする。以前、オカルト的な記事をいくつか書いたこともあった。多くは迷信、気のせい、フェイク等だったが、僅かながら理由の説明できない不思議な現象も見られた。そんな際は、決まって背中がぞくりとして寒気が襲ってくる。
今が、まさにそれだった。しかも、これまでにないほどの不気味さを覚える。
野中は後退り、そして振り返る。来た道を戻ろうとした。しかし……。
全く違う光景が、そこにあった。道の先は闇に閉ざされている。こんなところを通ってきたのではない。
驚愕して足を止める野中。
ふ……く……め……つ……。
闇の奥から声が聞こえてきた。単なる呻き声にも、何かの呪文にも思える。
ふく……め……つ……。
なんの感情も感じられない声。それは闇そのものが発しているかのごとく感じられた。
「な、なんだ? 誰だ? 来るなっ!」
震える声で野中が言う。最後の方は叫んでいた。
ふくめ……つ……。ふくめつ……。
キョロキョロと辺りを見まわしながら、バッグを開け武器になりそうな物を探した。しかし、モバイルPCとその関係機器くらいしか入っていない。とりあえずバッグごと前に持ってきて身を守るような体勢になる。
ガツッ、ガツッ、と硬質な物が動く音も聞こえてきた。
そちらを向いた野中は、恐怖に言葉を失う。
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