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神奈川県警浜波署の玄関を入ると、そこに田上が立っていて手をあげた。
「おはようございます」
ちょこんと頭を下げ挨拶する一馬。
「もうすぐ最初の捜査会議が行われる。まあ、座間署と合同捜査本部になるのも時間の問題だと思うが……」
歩き出しながら田上が言った。
「今回は、間隔が短いですね。これまでのように別事件に見せかけるつもりはないみたいだ」
一馬が応える。まだ犯人が誰かという以前に、殺人事件なのか、あるいは事故なのかも特定されていない段階だ。だが、これが一馬達の班が調べている件とつながっているのは明白のように思えた。
「先日の被害者と今回の被害者は、どうやら仲間みたいなものだったらしい」
「ジャーナリストなんですね。じゃあ、やっぱり……」
言葉にはしないが、2人とも納得して頷き合う。
捜査会議が行われる大会議室に足を踏み入れると、すでに多くの人がいた。浜波署の者達、県警刑事部から来た捜査員達、機動捜査隊員、鑑識、とそれぞれ緊張の面持ちで開会を待っている。
一馬と田上はとりあえず上座へ赴き、この本部の主導者の1人である管理官に挨拶をした。
「警備部の田上と島本です。オブザーバーとして参加させていただきます。ご了承を」
端的に伝える田上。それに合わせて一馬も軽く頭を下げた。管理官は渋い顔をする。
「公安が関わるような事案なのかね?」
「まだ何とも言えません。必要があれば、上から直接説明があると思いますので、それをお待ちください」
田上がそう言うと、管理官の表情はますます険しくなった。
「ちゃんと説明があったことなど、あまりないけどね」
嫌みのように言われたが、田上も一馬も再度一礼だけしてその場を離れる。こういうことには慣れていた。刑事と公安が不仲であることは、捜査の手法が違うので仕方ない。最終的に社会正義につながればそれで良いのだ、と無理にも気持ちを整えるようにしている。
例によって会議室の一番後ろ、最も端に2人並んで立った。
ん?
2人して上座の方を見ていると、見覚えのある人物が入室し席についた。
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