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 「あんなに目立つように呼びつけないでくださいよ」  雅は織田に駆け寄りながら迷惑そうに言った。行き先は資料室だろう。あそこが一番話がしやすい。  「別に気にすることでもないだろう? 笑顔で手でも振ってやれば良かったんだ」  フン、と鼻を鳴らしながら応える織田。  「そんな、一日署長のアイドルじゃあるまいし……」  「あたりまえだ。君がアイドルなんかになれるようなら、私は今頃ハリウッドスターだ」  ああ、ムカつくぅ……。  織田の後ろ姿に正拳突きを見舞いそうになるのを、必死に抑えた。  「だいたい、最後までいなくて良かったんですか? 捜査状況の確認も必要じゃあ?」  資料室に着き、織田を追って中に入りながら問いかける。  「あの捜査本部では、事件の解決は難しい。時間の無駄だ」  近くの椅子を引き寄せ座りながら織田が応えた。早速パソコンを起ちあげている。  「どうしてそんなこと言い切れるんですか?」  彼の横に立ったまま更に訊く雅。  「この件の裏に『人ならぬもの』が潜んでいるからに決まっているだろう。そろそろそのくらいわかるようになりなさい。学習が足りんぞ」  学校の教師が職員室に生徒を呼んで叱責しているような雰囲気になり、雅はムッとする。  確かに、あの遺体の状態は尋常ではない。しかし、これほど派手な事をする『人ならぬもの』も珍しい。織田と組んで最初に関わった事件以来だろう。  「今回の件は、ちょっと厄介になるかもしれんぞ」  織田がモニターを見ながら言った。  「そうなんですか? まあ、織田さんが関わるだけでも充分厄介なんですけど……」  「君は相変わらず失礼だな」  「これまで何倍も失礼だったのは、そっちじゃないですかっ!」  雅が上から食ってかかるように言うと、織田は苦笑しながら「まあまあ」と手を上げた。  溜息が出てくる。このオヤジと一緒だと本当に調子が狂う一方だ。  「ところで君は、この事件が単独で見ていいものだと思うか?」  「いえ」と織田の質問に首を振る。「先日座間市で発見された遺体と似ているという話も聞きましたから、おそらく捜査本部が合同になるのも時間の問題かと……」  「おお、少しは脳も発達したらしいな。よくできた」  拍手のようなそぶりをする織田。  殴りたい……と拳を握りしめる雅。
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