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 「これが先日の座間での事件の、遺体の状態だ」  織田がパソコンを動かし、モニターを雅の方に向けた。座間署のデータをここで見ているのだろう。悲惨なものだった。人間の残骸がそこに映されている。  今日の早朝呼び出され現場で見たこちらの事件の遺体のことも思い出し、雅は顔を(しか)め口元に手をやった。  「犯人、と言ってもいいんでしょうか? それはどうやら、同じみたいですね。人間業とは思えないし野生動物でもこれほどのものは……。確かに厄介ですね」  「厄介なのはそれだけじゃないんだよ。さっきの捜査本部の片隅にも公安の捜査員がいたが、先日の事件もだ。これら惨殺死体発見の背後には、公安が目をつけているようなことがあるらしい」  「公安が?」さすがに雅も目を見張った。「何か過激な人物や団体が関わっていると?」  「わからん。志郎に訊いてみたんだが、ヤツめ、捜査に関する事は漏らせない、と言いやがった」  志郎というのは織田の息子で、キャリア警察官だ。警備部――公安の上層部にいる。優秀なエリートで見た目も麗しい。雅は思わず胸をときめかせてしまいそうになった。慌てて気を引き締める。  「まあ、情報を漏らすわけにはいかないでしょうね。公安ともあれば尚更……」  志郎の顔を思い浮かべてしまったのを誤魔化すように、当たり障りのないことを言う雅。  「育てた恩を忘れおって……」  「それは関係ないじゃないですか、この場合」  渋い顔をする織田に、雅は苦笑した。  「とにかく、他にも気になることがいくつかあるんで、これから前の事件の管轄である座間署へ行く。車の手配をしたまえ。運転もよろしくな」  そう言って手を上げると、織田はまたパソコンを目の前に持ってきて何か調べ始めた。もう雅の方は見向きもしない。  まったく、相変わらずマイペースな上に人使いが荒いんだから……。  溜息をつくと、雅は資料室を後にした。
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