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ふと妙な感覚がよぎる。嫌な気分が突然襲ってきたのだ。気がつくと、先日ジャーナリストの惨殺死体が見つかった場所の近くを通っていた。
今朝は同じような遺体が横浜市内でも発見されたという。
損壊状況が、響希が2年前に巻き込まれた事件に似ているように感じられる。さらに、17年前の蔵での事件も……。
いや、関係あるわけないよね。
胸の中で自分にそう言い聞かせ、通り過ぎていく。だが、疑念は残る。
最近勧誘してくる宗教団体のことが気になった。彼らは北見家の宿命について知っているようだった。
なぜ……?
そういえば、あの織田という県警の捜査員も不思議だ。『人ならぬもの』という言葉を使っていたが、怪異についてわかっているふうな口ぶりだった。
様々なことが思い出され、どうして良いか整理がつかない。
気分は落ち込んでしまう。眠気や倦怠感も襲ってくる。響希は仕方なくコンビニに車を停めた。とりあえず温かいお茶を買ってきて飲み、シートを少し倒し気味にして休む。
ここで眠る気はなかったのだが、ウトウトしてしまった。するとしばらくして……。
ガチャガチャ ズルズル ガチャガチャ ズルズル……。
微睡みの中、あの蔵で骸骨が響かせていた音が聞こえる――。
ハッとなりシートから上体を起こした。
どうして、こんな時に……?
キョロキョロと視線を巡らせるが、窓の外は普通の景色だ。
夢だったの?
冷や汗をかいているのに気づく。顔を上げ空を見た。暗雲が浮かんでいる。それが徐々に広がっていくように感じられた。
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