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「やあ」と声をあげたのは織田だった。「北見君だったね」
北見というらしい女性はようやく雅から視線を外し、織田を見る。そして……。
「ええと、織田警部。ご苦労様です」
ぺこりと頭を下げた。
「ほう、名前も覚えてくれていたのか。光栄だ」
満足そうに応える織田。
「い、いえ、そんな。じゃあ、失礼します」
もう一度頭を下げると、北見と呼ばれた女性は慌てて署内へと向かっていった。
「彼女は?」
織田に視線を向ける雅。
「北見響希という座間署交通捜査課の捜査員だ」
「交通捜査課の?」
「先日来たときに知り合った。と言っても挨拶程度だがね」
「綺麗な人ですね。でも……」
雅が言葉を濁すと、織田はわかっているとでも言うように頷く。
「やはり気づいたね。私も感じたくらいだから、おそらく君ならそうだろうと思ったよ」
彼女は何か『人ならぬもの』の影響を受けている――そんなふうに感じられた。
「織田警部、彼女の背景についてご存じなんですか?」
「以前から名前だけは知っていて、もしかしたらと思っていた。まさか今回の件で出会うことになるとは思わなかったが……」
いつになく真剣そうな顔になる織田。
「以前から?」
「彼女は2年前、巡回中に強盗殺人犯のグループに拉致された。人けのない場所で乱暴されそうになったらしい。だが、その数時間後無事に保護された。気を失っていて、意識が戻るのは翌日だったという。そして、彼女が連れ込まれた辺りでは、強盗殺人犯達の惨殺死体が見つかった」
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