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 「でも、これが同じ犯人の仕業となると、北見響希さんが巻き込まれた件だけ浮いた感じになりますね。他のは一人を狙ったと見ていいけど、こちらは強盗犯3人。それも、見ようによっては響希さんを救ったとも言えるし」  「うむ。野生動物の仕業というなら、あるいはそんなヤツが密かに動きまわっているか、同じ種類の別の個体とも考えられる。まあ、私は人でも動物でもないと思っているけどね」  そう言ってまたパソコンをいじり始める織田。別のデータを呼び出している  「先ほど、北見響希さんについては17年前にも奇妙なことが、とか言ってましたけど……?」  「清棲(きよす)村、というところがあった。すでに廃村になっているがね。足柄上郡山北町に属する山間部の小さな村だった。そこで17年前、奇妙な事件があった」  またモニターを雅に向けながら説明する織田。  廃村……? 北見響希さんは、そこの出身なのだろうか? モニターに映る画像では、木々が生い茂る山をバックに、立派な蔵が建っている。  「村一番の名家の蔵に、男2人が盗みに入ったようだ。だが、どちらともその蔵の中で遺体となって発見された。両手足をもぎ取られ、首を引き抜かれ、血もほとんど残っていない状態だったそうだ」  「それって?!」  息を呑む雅。今の2件、そしてこれまでの3件、更に、北見響希が巻き込まれた件と同じだ。  「そう。なぜこの村の昔の事件に私が行き着いたかというと、2年前の北見君の件が気になり、彼女のことも簡単に調べさせてもらったからだ」  「どういうことですか?」  「清棲村一番の名家は、北見家というんだ。北見響希君はそこの娘だ。当時その蔵のある家に住んでいた。惨殺事件があった日、8歳だった彼女は森の中で崖から落ち気を失った状態で発見された。友達と一緒だったらしいがね」  「……」  言葉を失う雅。その17年前の事件の日、北見響希に何かがあった……。  「今の件、過去の3件、北見響希君の件、そして17年前の件、更に公安がなぜ動いているか……。いろいろ調べなきゃならんことがある。忙しくなるぞ。『特異未解決事件捜査班』の総力を挙げる」  そう言って織田が立ち上がった。  総力って言ったって……。  織田以外は兼任の捜査員が自分ともう1人だけだ。大げさに言うほどのことではないので苦笑してしまう。しかし、雅も微かながら胸が高鳴るのを感じた。
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