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 神奈川県警察本部。威容を誇るように建つそのビルを、雅はまぶしそうに見上げた。  県内の警察の総本山であり、何度か足を運んできたことはあるものの、そのたびに気後れしそうになる。  そんな雅の心中など頓着せず織田はさっさと中へ入って行った。  慌てて後を追う。「特異未解決事件捜査班」が起ち上がることになってからは初めてだ。専門の部屋でもあるのだろうか、と期待してみたが、結局着いたのは刑事部捜査課の会議室E……仮の一室だった。  「近いうちに正式な部屋をつくるように言ってある。最上階の景色の良い所を用意しろ、ともね」              雅が拍子抜けしたような顔をしていたからか、織田が弁明気味に言った。  「そんな贅沢なことを言うから、いつまで経ってもあいてる会議室を放浪することになっているんじゃないですか? これじゃあジプシーみたいなものですよ」  「いい男を求めて放浪している恋愛ジプシーの君よりはましだ」  「失礼なっ! 誰が恋愛ジプシーですかっ!」  怒鳴る雅。ふんっとそっぽを向く織田。  「わぁ、懐かしいですね、この雰囲気」  突然誰かが言った。涼やかなこの声は……!  「香納さんっ!」  振り向くとそこには、どこかアイドルを思わせる容姿の男性、香納義則がいた。彼はサイバー犯罪対策課の捜査員だが、織田お気に入りでよく彼の依頼を受けて調査をしている。そして兼任ではあるが「特異未解決事件捜査班」の一員だ。  「美樹本さん、また会えて嬉しいですっ!」  笑顔で言う香納に、思わず胸がキュンとなる。以前一緒に捜査をした後もLINEなどで連絡は取り合っていたが、会うのは久しぶりだった。
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