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 「私も香納さんにお会いできて嬉しいですっ! こんなおっさんの相手ばっかりしていると、もう気が滅入っちゃって」  本当に失礼だな、とぼやく織田を尻目に、雅は香納のそばまで駆けよる。  すると彼は頬を赤らめ、恥ずかしそうに下を向いた。  このシャイなところが、またカワイイんだよなぁ……。  「こらこら、君の頭の中を花畑にするために彼を呼んだんじゃないぞ。落ち着きなさい」  呆れたような顔で織田が言う。  「わかってますよ。ちょっとだけ、ときめきタイムです」  「香納君、連れ去られないように気をつけろよ。男を(むさぼ)る飢えたハイエナみたいなものだからな、彼女は」  永遠に黙らせてやろうか、このオヤジ……!  拳を握りしめ織田に迫る雅。彼が逃げる。慌てて止めに入る香納……そんな一騒動を経て、ようやくそれぞれが席に着いた。  「まずはとにかく……」  織田は資料をデスクの上に順番に置いていく。彼は電子データの重要性もわかっているが、紙の資料と併用することを推奨している。あらゆる視点をもち、様々な角度から見ることで事件を包括的に理解できる、と主張していた。  その理屈はある意味正しいとは思うが、雅は単に織田の好みの問題だとも感じている。要するに、紙の資料や本に慣れている世代なのだろう。  目の前に積まれた資料類を見て、香納が「うわぁ」と目を丸くしていた。そんな表情もいいなぁと感じてしまい、雅は慌てて首を振る。  「座間、横浜市浜波区の連続遺体発見……惨殺事件といってもいいかもしれんが、それらの情報を精査する。さらに、半年から一年前に別の場所で発生している同様の3つ事件との共通性や関連性も確かめよう。被害者に関することは充分確認し、共通点が少しでも見られたらピックアップしていくんだ」
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