3/4
前へ
/251ページ
次へ
 真剣な表情で頷く雅。全部で5件、悲惨な殺され方をした人達がいる。もしかしたら、今後も続くかもしれない。被害者に共通点があるとすれば、それを明らかにすることで次を防ぐことができる。  「そして平行して、2年前の座間警察署交通課捜査員、北見響希君が襲われ、その犯人達が惨殺された事件に関しても、充分調べてみよう。さらに、17年前に彼女の近辺で起きた事件もだ。窃盗未遂の2人の男性が、やはり惨殺されている。こちらの2件も、遺体の状態が先ほどの5件に酷似している」  北見響希という女性の姿が思い浮かんだ。デリケートなことだけにタイミングに気をつける必要があるが、彼女にも話を聞くことになるだろう。  うーん、と香納が怪訝な顔をした。  「どうかしましたか?」  雅が訊くと、彼が目の前の資料をいくつか手にとって並べていく。  「この17年前の山村の事件は別ですが、それ以外のは、実は志郎……いや、織田志郎警視にも調査を依頼されているんですよ。特に被害者の背景について綿密に調べてくれ、って……」  織田志郎――織田の息子にして警察官僚、神奈川県警警備部の上層部にいるエリート。つまり、公安関係ではある程度の指揮権を持っている。  「やはりそうか、あの馬鹿息子……」  顔を(しか)める織田。  「い、いやいや、そんな言い方は……」  苦笑する雅。志郎の凛々しい姿も思い出し、ふと胸が高鳴る。
/251ページ

最初のコメントを投稿しよう!

178人が本棚に入れています
本棚に追加