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「今日もさっき、特異未解決事件捜査班が動き始めるから少し顔を出せ、と連絡しておいたんだが……」
織田が懐からスマホを取り出す。LINEを見ている。たちまち怒りの表情になった。
「なにか?」「志郎から返事ですか?」
雅と香納が同時に訊く。
「忙しいから来られないと言いやがった。それに、今回の件にはあまり関わるな、とほざいている」
織田が憎々しげに言う。雅は疑問に思った。彼がこのメンバーで集まる場に現れないのは珍しい。あまり関わるなということは、やはりこの件の裏に公安が重要視する何かが隠れているからだろうか?
なんか、難しくなりそうだなぁ……。
不穏に感じながら、香納を見る雅。彼もこちらを向き、首を傾げる。
「あいつ、勘当だっ!」
怒鳴るように言ってスマホをしまう織田。
「い、いやぁ、そこまで? 落ち着いてくださいよ」
雅が呆れながら宥める。
「もういい。さあ、行動開始だ。香納君はとにかく綿密にデータをまとめて、そこから何かヒントがないか探ってくれ。美樹本君は現在の2件以外について、当時の担当者に当たってくれ。資料に記載されていないような、些細な事にもヒントがあるかもしれない。場合によってはそれぞれの所轄をまわるんだ。私と手分けをしよう」
「わかりました」
同時に珍しく敬礼する雅と香納。今は織田の機嫌をとった方がいいと感じた。
満足そうに頷く織田を見て、2人は密かに視線を交わし肩を竦めた。
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