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「しつこくしないでください。私はこれでも警察官ですよ? こんな行為は逮捕されてもおかしくありません」
強い口調で言う響希。だが巳城は怯まない。
「連行されたら、私はあなたのことも全て聴取で話すでしょう。それでいいんですか?」
くっ! と息を呑む。別に自分は後ろめたいことはしていない。とはいえ、北見家のことが口外されるのは気が引けた。
「ついてこないでっ!」
響希の声が夜道に響く。しかし、人けのない通りだ。それをいいことに、巳城はぴったりと響希の後ろにつく。
「あなたの力、北見家の秘術を、活かしていくチャンスなんですよ。あなたが地方の警察官なんかで終わるのはもったいない」
「私自身がそれで満足しているんです。放っておいてください」
どんどん歩くスピードが速くなるが、巳城はかまわずついてきた。
響希の住むマンションは座間署から15分ほどだ。まだしばらく先だし、着いたとしても居直りそうな雰囲気だった。
どういうつもり?
振り向いてキッと睨みつける。
それでも巳城は怯まない。鋭い目つきで見返してきた。尋常とは言いがたい。このままでは、ずっと食らいついてきそうだ。だが、その時……。
「何をやっているんだ?」
厳しい声が聞こえてきた。巳城に向けられている。男性だ。この声は?!
2人が足を止めた。声の方を向く。
「一馬っ!」
目を見張る響希。そこに一馬が立っていた。巳城を睨みすえながら、響希には軽く手をあげる。そして近づいてきた。
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