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 「彼女もそうだが、俺も警察官だ。これ以上つきまとうなら、それなりの覚悟はしてもらうぞ」  一馬が強い口調で言った。  巳城は「むっ!」と呻って睨み返す。視線がぶつかり合った。  しばらくどちらも退()かないまま、時間が流れる。響希はハラハラしながら見守った。  いくら人通りが少ないと言っても、いつまでもこうしているわけにはいかない。ようやく、巳城の方が先に目を(そむ)けた。  「よく考えておいてください」  彼は響希に向かってそう言い残すと、足早に去って行った。  「大丈夫?」  一馬が響希に問いかける。柔らかく、優しい目に戻っていた。  「う、うん。ありがとう。助かった」  「送るよ。一緒に行こう」  そう言って笑う一馬に、響希は胸をときめかせる。素直に嬉しい。懐かしい想いがよみがえる。  2人並んで歩いた。こういうのも久しぶりだ。  しかし、一馬は思案気味の表情で響希を見る。そして遠慮がちに声をかけてきた。  「あのさ、ごめん。ちょっと話を聞いてしまったんだ。北見家の秘術、ってなんのこと?」  「えっ?」  ドキリとした。これまで誰にも言わず、胸に秘めていたことだ。あの、今大宝房に突き止められるまでは……。  響希が戸惑っているのを感じとったからか、一馬は意を決したように彼女をまっすぐ見つめた。  「俺、響希の力になりたい。今のヤツのこともそうだし、他にも心配事があるなら、教えてほしい。なんでも言ってくれよ」  真剣な視線を向けられ、響希の足がまた止まる。  一馬も立ち止まり、彼女を見つめた。  しばらく時も止まったようだった――。
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