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雅が県警本部に戻る頃は、すでに夜も更けていた。
あの後、織田と手分けして過去の事件の捜査担当者に話を聞きに行った。電話やネットを通じての質問でも良かったのだが、織田の意向もあり、できるだけ生の声を聞くことにしたのだ。また、資料を直に見せてもらうにもその方がやりやすい。
自分は所轄の捜査員だが、こうやって県警本部を拠点とすることは誇らしさを何倍にもしてくれた。
なんか、捜査一課の刑事みたいに見えるかな?
そんな、ある意味ミーハーな思いを抱きながら、特異未解決事件捜査班が臨時に設置された会議室Eに向かう。
「美樹本さん」
不意に後ろから声がかかった。足を止め、振り返る雅。
「あっ!」
思わず声をあげてしまった。
「お久しぶりです」
頭を下げる、長身でスタイルも良いイケメンの男性。高級そうなスーツに身を包むエリート然とした姿だが、そこに威圧感はなく、むしろ爽やかさを感じさせる。
「志郎さん……。い、いえ、織田警視」
ピシッと姿勢を正し、敬礼する雅。
「やめてくださいよ、そんな。もっと気軽に接してくれた方が嬉しいです」
志郎が苦笑しながら言う。
「私のような一介の捜査員が気軽にお相手するわけには……」
「何を言っているんですか? 同じ警察官じゃないですか。それに、僕たちは仲間と言っていいでしょう?」
確かに、以前は織田や香納とも一緒に困難な事案に立ち向かった仲だ。
「そ、そうですけど……」
突然の再会に、雅は戸惑っていた。
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