14.前世に囚われる私たち。

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14.前世に囚われる私たち。

「姉ちゃん? 姉ちゃんも新しく生まれ変わってたんだ! 俺、殺された時に願ったんだ。今度、生まれ変わったら誰に妨害される訳でもなく、努力したら努力しただけ認められるような人生が送れる人になりたいって」 私は突然エドワード王子の口調が弟の優太になったことと、彼が殺されたと言ったことに動揺してしまった。 優太は教科書やノートを破かれたり、学校生活を正常に送ることを妨害されていた。 それでも彼は私と違い完全な不登校にはならず、定期テストの時だけ登校したりしていた。 定期テストで首位をとっても、学校で授業を受けていないので成績は最悪だった。 「私は10歳の時にイザベラに憑依したの。そんなことより、優太は殺されたの?」 「憑依? なにそれ。殺されて目が覚めたらエドワード・ライとして生まれてた。前世の16年間の記憶があったお陰で、幼い頃から優秀だという印象をつけることができたんだ。でも、どんなに努力してもルブリスの臣下だ。ルブリスは昔から勉強もサボりまくって、たまにやる気を出せば褒められまくった。あいつを見ていると姉ちゃんを虐めていた白川愛を思い出したよ」 優太は家にいる時、私のように小説や空想の世界に逃げ道を探すのではなくひたすらに勉強していた。 現実的な彼は、転生や憑依といった非現実的なものは信じない。 ただ自分がエドワード・ライとして新しい生を受けたと認識しているのだろう。 「エドワード・ライとして生まれ変わったのに、優太は前世に囚われてない? ルブリス王子殿下は白川愛とは違うよ」 「囚われているのかもな。姉ちゃんはすっかり前世のことは忘れたんだな。覚えていたら人を好きになんてなれないだろ。姉ちゃんが死んだ後、白川愛は友達がトラックから轢かれそうになったのを守った美少女として騒がれたんだ。あんな田舎の交通事故でも、地元の名士の美しい娘の友情に感動するメロドラマとしてマスコミに取り上げられた。散々姉ちゃんを虐めてきた白川愛が姉ちゃんを助けるはずがないと俺は思った。白川愛の遺品に姉ちゃんの定期入れがあったと聞いて、姉ちゃんから奪ったものだと推測した。姉ちゃんは定期がなくて大学に行けないと困るから、定期入れを取り戻そうとして慌ててしまい事故に巻き込まれたんだと考えた。それを白川家に訴えにいったら、貧乏人はそんな作り話までして金をせびりにくるのかと言われたんだ。だから俺は姉ちゃんの遺した持ち物から、今までの白川愛を中心とした虐めの証拠を引っ張り出してネットにあげたんだ。一気に白川愛を中心とした学校全体を巻き込んだ虐めは明らかになり、俺は復讐を果たせたと思った。姉ちゃんの遺灰を海に流そうと思って海に着いたところ、後ろから刺されたんだ。誰に殺されたのかなんて分からない。俺は実名でしっかりネットに加害者を晒したから、きっとたくさんのやつに恨まれている。そいつらは自分のしたことを、棚に上げて俺を恨む権利があるのか?」 優太は本当に優秀だ。 彼の推測通りの展開で私は死んでいる。 彼が虐められたことだけでなく、彼が死んだことも私のせいだということだ。 全て私のせいで優太の人生は狂ってしまった。 きっと優太は前に一度だけ近所のおじさんが連れて行ってくれた海に、私の遺灰を流そうと思ったのだろう。 私があの海の楽しかった思い出を、いつも話していたのを彼はよく聞いてくれていた。 「優太、私のせいで苦しんだね。それにエドワード王子が優太だって今まで気が付かなくてごめんね。」 私はライト公爵が娘のイザベラに私が憑依したことに気が付かないことを、心で非難していた。 私こそ16年も一緒に過ごした弟が近くにいたのに、全く気が付かなかったではないか。 「いや、俺のほうこそ全く気が付かなかったわ。今、思えばイザベラ様ってまんま姉ちゃんだよな。最初に買い物に連れて行った時、王妃様にとってエドワード王子の存在が一番のプレゼントって言ってたじゃん。あれまんま、母ちゃんが俺と姉ちゃんに言った言葉だよな。なんで気がつかなかったんだろう。早めにエドワードが俺だって気がついてくれたら、姉ちゃんはルブリスじゃなくて俺の味方をしてくれたよな」 「私はエドワード王子が優太だと知っていても、絶望しているルブリス王子殿下の味方をしていたと思う。味方が1人もいない苦しみを知っているから放っては置けないよ」 「どうしてそうなるの? 姉ちゃん、前世の虐めが壮絶すぎて感覚が麻痺してない?ルブリスが姉ちゃんにしたことは最低だよ。姉ちゃんが彼にするべきことは復讐で、救済じゃなかったよ。あいつが絶望していたのなんて1日くらいだよ。あいつは王位の長子相続のルールを撤廃するよう国王陛下に進言しただけで褒められてた。昨日までフローラに夢中で今はイザベラだとばかりに、頭ん中は女のことばかりでお花畑なやつだよ。姉ちゃんやカール様の力を借りて成功しているのに、全部自分の手柄にしてるのもありえないだろう」
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