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1.マイペース王子再び。
「サイラス王太子殿下、明日から、サイラス国王陛下とお呼びしなければなりませんね」
ライ国の国王陛下がサイラス様に挨拶をしている。
ライ国からの一行が明日の戴冠式に向けてやってきた。
私はライ国の国王陛下までいらしたことに驚いてしまう。
王子2人もルイ国に来ているということは、ライ国の留守は王妃様が守っているということだ。
国王の不在時、国王の代理をするのも王妃の仕事だ。
「姉上、少しお話よろしいですか?」
サイラス様を中心に挨拶を交わす集団から抜けてきて、カールが私に声を掛けてきた。
私はサイラス様と一瞬目があったので、席を一瞬外す旨を伝わるか分からないがテレパシーで伝えた。
カールとルブリス王子殿下を私は自室に案内した。
「何かありましたか?」
部屋に入るなり私はカールに尋ねた。
「姉上、僕たちに姉ができます。マリアンヌ・ライト公爵令嬢が誕生するようです。彼女は実は僕の血の繋がった姉です。」
カールが顔を顰めて嫌そうな顔をする。
彼はライト公爵家の親戚の伯爵家から、公爵家の跡取りにするため連れてこられた子だ。
彼が前の家のことを話すことはなかったから、特に聞いたことはない。
彼に3つ年上の姉がいることは知っていた。
私に最初から優しく接してくれたのは、彼が姉というものに慣れているからだと思っていた。
「姉は僕がライト公爵家の養子になると、伯爵家の後継者になるべく育てられました。姉は野心家で優秀です。そして、男に生まれたからと言って後継者として育てられていた僕をいつも敵視していました。ルブリス王子殿下が王位継承権争いにおいて優勢になったことで、貴族達が自分の娘を殿下の婚約者にと続々と声をあげ出しました。それを殿下が、自分は永遠に姉上を愛し続けると断ったんです。マリアンヌは赤髪で見た目は姉上に似ているとライト公爵は考えたのでしょう。彼女は野心家なので伯爵になるより、王子の婚約者になり王妃になれる可能性がある公爵家の養子の話に飛びついたのだと思います」
カールが自分の姉を冷たく名前で呼び捨てする姿に驚いてしまう。
彼はルブリス王子の失礼な態度も微笑ましく見れるくらい器の大きい人だ。
敵視されていたというが理由はそれだけだろうか、私には言えない何かがあるのではないだろうか。
前世の弟も自分が苦しいところは頑なに私に見せない子だった。
そういう男の子のプライドのようなものを、カールにも感じるので私もあえて聞こうとは思わない。
それにしても相変わらず、ルブリス王子は空気の読めない発言をしているようだ。
「ルブリス王子殿下、婚約者を受け入れないのは殿下の勝手ですが、私の名前を出すのを控えて頂ければ助かります」
私はカールの隣にいたはずのルブリス王子殿下に話しかけたが、彼の姿がなくてあたりを見回してしまう。
「殿下、寝ないでください⋯⋯」
カールが私のベットのシーツを捲ると、そこにルブリス王子殿下が寝ていた。
「ルブリス王子殿下、勝手に私のベットで眠らないでください」
余程疲れているのかもしれないが、ここで眠られたら私が困る。
「頼む寝かせてくれ。馬車で丸7日休まずに移動してきたんだ。私は繊細な体をしていて、馬車などでは眠れないんだ。それにルイ国が寒くて仕方がない。今日はイザベラの温もりに包まれながら、このまま眠ることにしたから詳しい話はカールから聞いてくれ」
目も開けようともせず、ルブリス王子殿下はそのまま深い眠りにおちていった。
私は相変わらずマイペースなところがあるルブリス王子に困ってしまった。
しかし、ルブリス王子がライト公子ではなくカールと呼んだことに嬉しくなってしまう。
「カールはルブリス王子とずいぶん打ち解けたのね」
「まぁ、放って置けない気持ちにはさせられてますね。まだ、王子殿下にはしょっちゅう信用できないと言われていますが、殿下はいつも自分の気持ちに正直なので僕は彼を信用できています。ライト公爵がマリアンヌと婚約をしてはどうかと、ルブリス王子の元に彼女を連れて来ました。王子殿下は、自分は姉上の魂に惚れていて姉上以外の女はいらないと言い突っぱねました。マリアンヌは自分を姉上だと思って側に置けば良いと、殿下を説得しようとしました。王子殿下はイザベラとマリアンヌは全然似ていない。マリアンヌは性格の悪さが顔に出ている。ライト公爵もイザベラと似ていると思って彼女を連れて来たのだとしたら、姉上と自分を侮辱している。似ている女なら好きになるような愚かな男に見えるのかと怒りました。なので、ルブリス王子とマリアンヌは婚約しません」
私は自分がサイラス様に似たライアン王子に一瞬ときめいてしまったことがある。
似ている人にときめいた過去のある愚かな自分が恥ずかしい。
「それではライト公爵の目的は達成できないので、公爵はマリアンヌ様を養子にはしないのではないですか?」
「マリアンヌは、ライト公爵にエドワード王子の側室になって王子を産み、ライト公爵家の血筋の者を国王にすると提案しました。エドワード王子は劣勢になった今の状況をひっくり返したいと思っています。彼はライト公爵家の後ろ盾を得るためにマリアンヌを側室にすることを約束しました。ライト公爵は彼女を近々養子にするでしょう」
「エドワード王子はどうしてしまったのでしょうか?ライト公爵家とは距離をとっていたはずです。ライ国の国王になることが目的になってませんか? それに彼にはレイラ王女がいます。」
その時ノック音と共に、サイラス様が部屋に入ってきた。
「サイラス様、お疲れ様です」
サイラス様は、私に微笑みかけてくれた後ベットで眠っているルブリス王子を思わず凝視していた。
「イザベラ、今日は私の部屋で一緒に寝ましょうか?」
サイラス様は今の状況になったことを、きっと怒っていると思った。
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