5.私は男を手玉に取ってません。

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5.私は男を手玉に取ってません。

「ここにありますね。イザベラ様。やはり2国間の王子を手玉にとる女性は、男の気の引き方が違いますね」 彼は私のまつ毛を撫でながら囁いたと思うと勝手に私のベットに座り、私の手を引いてくる。 ルブリス王子殿下が外出着のまま勝手に私のベットに寝たもの驚いたが、彼も似たようなことをしている。 生まれながらに次期国王という輝かしい未来が約束された人間は、ここまで自由になってしまうのだろうか。 なぜ私は生粋のスーパー坊っちゃんの美形ルブリス王子に、生粋の貧乏ブスの綾を見ていたのだろう。 世界中が敵になった瞬間があっても、彼を平民街に連れてったらあっという間に味方が増えた。 美しい王子様が微笑んでくれるのだから、当然なのかもしれない。 地元から東京の大学に行っても、ろくに友達も作れずブスと陰口を言われた綾とは違うのだ。 「私は男を手玉になどとってません!」 失礼を承知で彼の手をなんとか振り解き、扉の前に立った。 レイモンド様がベットに座ってしまったから、彼から遠い扉の前でいつでも逃げれるようにしなければならない。 人が何を考えているかを考えすぎるのは、私の欠点だと分かっている。 しかし、彼の言動から察するに、私は男を手玉にとる不埒な女だと他国では思われていることだ。 心臓に針が刺さったように、胸が痛くなっていく。 「ルイ国は良いですよね。我が国と同じ一夫一妻制だとしても、情婦を囲っても誰にも文句を言われません。生物の特性上、男が1人の女で満足できるわけがないのですよ。もっとも、イザベラ様は1人で満足させるだけのものを持っていそうですね。結婚したらサム国では否が応でも1人の女しか抱けません。この年まで粘りましたが、この式典から帰ったら婚約者指名をしなければなりません。婚約したらすぐに結婚です。でも、今夜はそんな悲しい運命にある私を慰めてくれる女性に出逢いました。イザベラ様、そんなところで門番をしていなくても、この時間に誰もきませんよ。こちらに来てください、怖がらないでもイザベラ様の嫌がることはしませんよ」 誘うような彼の言葉に、私は相当軽い女だと思われていることに心が沈んでいく。 「結婚するまでしか遊べないのでしたら、結婚を遅らせれば良いではないですか。例えば婚約者指名に幼い高位貴族を選んではどうでしょうか? ちなみに、あと何年、女遊びをすれば遊び疲れそうですか?」 「7年か8年くらいは、色々な女を抱きたいです。でも、24歳くらいで結婚となった時、1人の女で満足するよう性欲を抑えられるかは自信がありません」 レイモンド王子は先程までだらしなくベッドに座っていたのに、急に背筋を正してきた。 「レイモンド様は現在18歳ですよね。サム国の女性の婚姻年齢が16歳ということを考えると8歳くらいの子を婚約者に指名すれば、あと8年は遊べますよ。その時点でまだ遊び疲れていなかったら、何らかの理由をつけて婚約破棄をし結婚までの時間を稼いでください。やり過ぎると長子相続のルールを無視してでも、8歳年下の弟君を次期国王にするような声が出てくるかもしれないので注意してください。サム国は地の利があり海上貿易が盛んですが、一番の国の強みは他国から優秀な女性を集められていることです。女性にだけでなく、男性にも貞操観念を求める点でサム国は女性の権利が保障されていると思われているのです。他国はどうしても男性優位の社会です。レイモンド様は一夫多妻制に憧れを抱いているようですが、その気持ちは捨ててください。サム国の強みがなくなります。結婚してからの不倫も絶対してはなりません。サム国の国王になられるレイモンド様がそのようなことをしては、国内で求心力を失うだけでなく国際的なスキャンダルになります」 「イザベラ様、あなたは天才ですか? ただ、結婚という地獄に絶望するばかりで、そのような考えには辿りついていませんでした。そして、今あなたが心から私とサム国の幸せを考えてくれているのが分かります。サイラス様は最高の女を手に入れましたね。イザベラ様が16歳ではなく、もっと若ければ無理にでも私のものにしてました。サム国は女性は16歳で結婚できてしまうので、ルイ国と敵対する覚悟であなたを連れ去れても即結婚です。やはり、今、1人で我慢しろと言われるのはキツイです。エドワード王子はアツ国の姫を側室にしようと考えているようでした。アツ国の姫は不細工なのですが、彼は気にしないと言ってました。婚姻によって関係性を築こうとするのは、一夫多妻制の国の独特な方法ですね。サム国とも関係を結びたいらしく、有力貴族の娘を紹介してくれないかと言われていたのです。だから私のお古でよかったら紹介しますが、サム国は王家の力が強いので有力貴族と結婚しても意味ないですよと言ってやりました。一夫多妻制を自慢されているようで少し意地悪してやりました」 エドワード王子がやろうとしていることで、レイラ王女が傷つくのではないかと思い私は不安になった。
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