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──あああアぁァああアアアアァァあ唖アあぁああアァっ
俺の体内で震える霊魂が叫んだ気がした。
皮膚が液状化してグジュグジュになったみたいで、気持ち悪さが全身を覆う。
俺は白い光に見下されている。何なんだと言葉を吐こうとしたが、痛みで口すら動かせない。
痛みに耐えながら緩々と首を動かして、全身を眺め見ようとする。ゆっくり布団をどかし、固定されているようで口を動かせないので、絶叫のイメージだけした。
包帯が全身に巻かれ、ベッドの手すりにも括りつけられて拘束されている。起き上がれず、ジタバタするイメージだけをする。
なぜこんな状況に陥っているのか。ここはどこだろうか。
一回深呼吸して辺りを見渡した。白いカーテンの隙間から差す夕陽、恐らくマホガニー材であろう棚、密閉されたスライド式の白い扉。見た感じ、どこかの病院の中の一室のようだ。
なぜ俺は病院にいて、こんな繭みたいに包帯で包まれているのか。時計の秒針を刻む音だけが静寂にレ点のようなアクセントを加える。
どれくらいの時間が経過したか。白い天井に記憶の残像が映り始めた。火達磨になっていく木彫り人形、右足に縋りついて来るお母さん、お母さんの燃えた服の下から覗いた下品な言葉群。火の海が赤の反対色の緑となって天井に映る。
ようやく思い出せた。自宅が燃やされて火事に逢って、病院に運ばれたようだ。
床を這うお母さんの紫の唇が黄色になって天井にチカチカ映し出される。思い出すたびに、炙るようなジクジクしたムカつきによって臓物が痛む。
元々会話の多い家族ではないが、俺を生んだ張本人が俺を殺そうとしたなんて。
俺が父親みたいになるからという、全く納得できない動機だったから余計に気持ち悪い。
父親のような人間で終わりたくないと思っている。何者かになりたい。包帯で体を固定されながらも、熱い気持ちが体内で赤い熱を放っている。
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