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地獄の監禁生活。才を腐らせるワンルーム
──一生閉じこもって、人形を作り続けろだって……。
全くもって実現不可能なアイデアが飛び出た。期待していなかったが、予想以上の愚かさだ。
「何言っちゃってんの。どこが頭の良い稼ぎ方だよ」
何の前触れもなく、父親は俺の頬骨の辺りを拳で殴った。衝撃で顔面の中身がシェイクされ、視界が上下反転する。
「ふっざけんじゃねえ。てめえ、俺が退院したばっかだって、もう忘れたのか」
「うるせえ、てめえは俺の駒だって言ったろ。ムカつくなあ。てめえムカつくなあ。文句言った瞬間、マジでぶっ殺すからな」
権力や財力、知力がないため暴力だけは一丁前に振るう。ザコい人間の証拠だ。
「でも、それをする代わりに学校に行くなは狂っていると思うわ。金がねえなら、婆ちゃん頼れよ」
「もう頼りきれねえんだよ。今回の火災でもけっこう迷惑かけちまっているんだから。それくらい分かれ」
また悪態を吐くと拳が飛んで来るので、全神経を使って言葉を堰き止める。
「だから、二十四時間、俺が指示したことだけをやる機械になれ。それくらいの気持ちがないと乗り越えられねえからな」
父親は小さい縦長の、デッドスペースを無理矢理埋めたみたいな押し入れを開けた。何か取り出すつもりだ。
テーブルの上に広げられたのは十二本の使い古された彫刻刀の入ったケースだった。ケースの隣に角材も置いてあった。
「とりあえず、今から説明する招き猫の人形をとりあえず三か月間、ひたすら作り続けろ。どうせ失敗するだろうから、もっとやるだろうが」
「同じ物を延々作り続けろって言いたいのか」
正気ではない。
「人の話をちゃんと聞け。何度も同じ内容を話させるな。そうに決まっているだろ。馬鹿じゃねえの」
この男は作れば作るほど、売れるとでも思っているのか。数が多いだけ希少性が下がり、価値もなくなる。誰も欲しがらないだろう。しかもこんな素人が初めて彫った人形など元々価値などない。
「本気でそれで稼げるとでも思ってんのか」
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