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ふと、ミルクの優しいにおいがして目を覚ます。
僕の大好きなにおい。
優しくて、あたたかくて、みずみずしい生命のにおい。
「レイちゃん、この子はね、まひるっていうの。あなたの双子の妹よ。仲良くしてあげてね」
ママは、手の中の小さな生命を愛おしそうに見つめながら、僕に言う。
――分かってるよ。この子は僕の新しいたからもの。僕が守らなくちゃいけないもの。まひるちゃんは、僕の大切な妹なんだよね。
まひるちゃんは、よく笑う天真爛漫な女の子だった。
「レイ! まひる! おいで」
パパとママに呼ばれ、僕とまひるちゃんは我先にとふたりの胸に飛び込む。
「ふふ、いい子ね」
「可愛いなぁ」
パパもママも、僕とまひるちゃんを同じように愛してくれる。
僕は、この家族が大好きだ。
僕たちはずっとこうして一緒にいられる。こんな生活が、いつまでもずっと続く。
そう信じてた。
……だけど。幸せというものは、とても儚く脆いもので。
悲劇は、ある日突然訪れた。
大地がふたつに裂ける轟音とともに、視界が歪んだ。
――パパ! ママ! まひるちゃんっ!!
なにかが割れる音。
なにかが落ちる音。
だれかの悲鳴。
音が鳴り止まない。
――怖い。怖い、怖い。
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