ニジュウゴバン

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後に、僕へは鈴木さんから本当に最後のメールが届いた。それはたった一枚の画像データだった。 あの夜、トンネルの前で記念写真を一人で撮った鈴木さん。 僕は見てから歯を噛み締めた。 そこには笑っているイケメンと、彼を囲んだ懐かしい三人の透けた姿が写っていた。 彼らは四人で笑っていた。 もう、この世にいない四人のさいごの笑顔だった。 有刺鉄線を挟んだ先にはぽっかりと口を開いたトンネルがいた。 闇が広がる口の奥からは無数の手が彼に向かって伸ばされていた。そして、トンネルにはきらりと光る牙がこれからやって来る獲物を心待ちにしていた。 僕はもう一度あの動画を再生した。 そして、そして、それを聴いた。 「久しぶり。また、四人で配信しよう」 それは僕に向かってのメッセージじゃない。そのことだけはわかってしまった。 彼らは久しぶりに会えただろうか。 四人でまた楽しそうに、語り合っているだろうか。 僕は今度こそ本当に、パソコンの電源を落とした。
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