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音声のみの配信となります
ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーぶち
お。これでいいか?
ちゃんと映ってるか?
よしよし、オレできるじゃん。さすがイケメン。
久しぶりに配信するゼ。ホラー動画を探し隊、伊達男の鈴木。顔はイケメン、声もイケメン。オレに、惚れんなよ。なーんつって。
「ぐい」
んあ? 誰か引っ張ったか?
んなことないか。車に乗ってんの、オレ一人だもんな。
あー、もうずっと連絡取れねえわ。四人で隊だったのに、一人じゃつまんネ。でも約束だかんな。オレは最後になっても配信する。
んじゃいっくぜー。
と、赤信号赤信号。
うげ、前の車信号無視だ。ざけんなよ。
オレの題材はトンネル。廃トンネルとかあるあるだよな。何番煎じってハナシ。
山がある限り穴は掘られる。トンネルは掘られる。
「アタシの出番よぉ」
んんん?! 何か寒気が!
き、気のせい! 気のせい!
「プップー」
お、さっきの信号無視捕まってらァ。ざまーみろ。
でェ、オレが今から行くのは何処に繋がってるのかわかんないトンネル。地図を見ても行き先は白紙。いつ頃作られたとかも不明。でも何故か地元民には知られた謎トンネル。
ふふふ、オレは全てを知ってしまった。何故ならオレがイケメンだからである。
ってのは冗談で、毎度お馴染みの出席番号25番からの情報だ。奴は五人目なのかもしれない。いや、探し隊はオレらの四人だけなんだけどさ。
とにかく、そのトンネルは実在している。実在しているから、今オレは華麗に車を飛ばしてそこに向かってるってトコ。
「ドン♪ チキ♪ ドン♪ チキ♪」
あ? この着信音、あいつのじゃん。え、何処からかけてんの?
おい、待て待て。止まれねェよ。待てコラ、出るまで待て山田。
「ドンチキドンチキドンチキドンチキ♪」
マジで待ってくれてるわ。草。でも着信音が加速してるー。
「ドンドンチキチキドンチキドンチキドドンチキドンドンチェケラ♪」
待て。アレンジするな。誰だこんな設定にしたの。佐藤だろ。絶対あいつだろ。なんだ最後。
あ、やべ。今のとこ右折だ。
うー、さすがに切ったか。かけてこれるなら山田は生きてると考えていいよな。後でかけ直そ。
は? 着信履歴、残ってないんすけど。
と、とにかくトンネルの話!
あー、オレってさ、よくコメントで四人組の中で蛇足的な存在って言われるんだよな。イケメンに対する当て付けよ。
おネエの田中を敵に回すとケツがアブねえだろ? 山田は陽キャだから叩いても意味ナシ。佐藤はクールにスルー。だから残ったオレを標的にする。イケメンだしな。
他の三人がいなけりゃ何もできない。アイツはいなくてもいい。なくてもいい。蛇の足。蛇足。オレはよくそう言われる。もうネタなんだよな。鈴木は蛇足。
そこから今回の話が来たんだよ。
「がががっ」
もう周りに家とかなんもないな。木ばっかじゃん。いや、何か変な生え方してね? これかァ、25番が言ってたのって。
オレがもともと調べてたのは蛇に関係する場所。ネタで蛇足だからな。
そしたらヒットするのは妖怪とか祠とか、あと有名な♂蛇池。某ホラーゲームの舞台も出たな。
地味なんだよ。パッとしない。
もう別のテーマにしようかって時に25番からメールが来た。
蛇に関係するらしいトンネルが地元にありますよ。
そいつからの連絡自体スッゲエ久しぶりだった。配信が止まって、山田も佐藤も田中もいなくなった。
ぶっちゃけ寂しかったんだよな。だからそのメールに浮かれた。オレが配信すればアイツらはきっと観る。
アイツらからの連絡が欲しかった。オレたち四人で始めた動画配信だ。また、四人揃って配信したい。そう思ったから。
一人で、配信する。
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