1.ビアンカ様の結婚式。

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1.ビアンカ様の結婚式。

サイラス様がルイ国の国王に即位して1年が経った。 私は17歳になり、今日はビアンカ様の結婚式にアツ国に来ている。 「ビアンカ様、ご結婚おめでとうございます」 「ありがとうございます。イザベラ様、この毛糸のぬいぐるみのプレゼントすごく可愛いです。一生大事にします」 私はビアンカ様とカルロス様の編みぐるみを結婚式にプレゼントした。 ルイ国からは国宝を贈呈したが、それとは別に初めての友達になってくれたビアンカ様に私が贈り物をしたかったのだ。 「喜んでもらえたら嬉しいです。ビアンカ様とカルロス様のお洋服をどんな感じにしようか迷ったのですが、ウェディング姿にしてみました」 私はお姫様の服と騎士服のペアにしようか悩んだ末、2人のウェディング姿にした。 しかし、ビアンカ様と手紙のやり取りをする中で2人が結婚するまでは苦難が多かったと私は知っている。 おそらく、その苦難はこれからも続くのだろう、でも今の2人は不安が吹っ飛ぶくらい幸せそうに見えて安心した。 「もしかして、イザベラ様の手作りなのですか?」 「はい、私の手作りです。」 「すごいですね。ものすごい時間がかかったのではないですか? どのように作ったのですか?」 「毛糸で編んだだけですし、そんなに時間はかかってませんよ」 「作り方を教えて欲しいです。これは流行するのではないでしょうか?アツ国には子供の最初の靴下は毛糸で編む風習があるのです。このぬいぐるみ1歳くらいの子の大きさですよね。等身大の1歳の子にプレゼントしたりする風習を作ったりしたら流行すると思います」 ビアンカ様は私が王妃として、貴族令嬢との関係に悩んでいることを知っていた。 今は前世のように虐められたりはしないが、それでも自分が彼女たちをまとめ憧れられる存在になれるとは思えないのだ。 王妃というのは、常に流行を作り出したり経済を回したりする役割もあるらしい。 ファッションリーダーにならねばと気負っていたが、ファッションに拘らなくても大丈夫なようだ。 「流行しますかね? 風習とは作れるものなのですね。早速、サイラス様に相談してみます。実はサイラス様が誕生日に私が欲しいとおっしゃったので、私の形を編んだぬいぐるみをプレゼントしたのがはじまりなのです。編みぐるみというのですよ」 私の言葉にビアンカ様の隣にいた新郎のカルロス様が頬を赤くして咳き込んだ。 編みぐるみのプレゼントは大人にするには子供っぽかったということだろうか。 「お2人はとても仲良しなのですね。私もビアンカ女王陛下を公私に渡りお支えできるよう努めて参りたいと思います。これほど、心の篭ったプレゼントは始めてです。私の編みぐるみまで作って頂きありがとうございます」 カルロス様は少しお見かけしただけなので、デフォルメするにしても再現が難しかった。 サイラス様の22歳の誕生日にはサイラス様の形の編みぐるみをプレゼントしたので、そのノウハウを元に男の子型の編みぐるみを作った。 「お2人ともお幸せになってください」 サイラス様がアイコンタクトをとって呼んでいるのが分かったので、私はそちらに向かった。 「イザベラ、紹介します。サム国のフィリップ王太子殿下です」 金髪に海色の瞳をした11歳の彼はとても大人びて見えた。 誰がみても、完璧な王子様で私より年下のはずなのに緊張してしまう。 「フィリップ・サムです。イザベラ・ライト公爵令嬢、兄上に迷惑を掛けられましたよね。僕から兄上の行いについて謝罪させてください。謝罪して許される問題ではないことも理解しております。そのような失礼をしたにも関わらず、平和同盟に我が国を加えて頂いたことに深くお礼を申し上げます」 「いえ、平和同盟は世界一の強国とも言われるサム国のお力があってこそ意味がありますから」 サム国は地の利もある上に裕福だ。 ビアンカ女王が誕生してアツ国が不安定になると、真っ先に攻めてくる恐れのある国だった。 だから、サム国を同盟に加えるのは必須だった。 「サイラス国王陛下に、エドワード・ライがお目にかかります。イザベラ様、相変わらず幸せそうで何よりです」 私の前世の弟であるエドワード王太子殿下が挨拶にくる。 彼が今にも国王になりそうな佇まいをしているのも当然かもしれない。 彼は、前世で16年、今世で15年、不屈の精神を持ち努力し続ける優太の魂を持つ男だ。 つまりは、見た目は16歳、中身は31歳なのだ。 「フィリップ王太子殿下、初めまして、ライ国の王太子エドワード・ライと申します」 「初めまして、エドワード王太子殿下。とても聡明な方だとお噂はサム国まで届いていました。不肖な兄を持ち絶え間ない気苦労をしてきた者同士仲良くしたいと思っております」 私は彼の言葉に驚いてしまった。 ルブリス様は廃嫡になったとは言え、エドワード王太子の実の兄だ。 私はエドワード王太子がルブリス様に生まれてからずっと憎しみを抱いていることを知っている。 その感情を見抜いたのだろうか、そうでなければかなり失礼に当たる言葉だ。 でも、きっと今世での自分の苦労を長い間気がついて貰えなかっただろうエドワード王太子の心には届く。 2人の金髪の年相応に見えない大人びた王子たちを前にして、私はフィリップ王子も転生者なのではないかと疑った。
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