2.蜜蜂としての仕事と兼業するのではないでしょうか?

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2.蜜蜂としての仕事と兼業するのではないでしょうか?

結婚式が終わり、舞踏会まで私はサイラス様とお部屋で過ごすことになった。 「サイラス様、フィリップ王太子殿下は完璧すぎではないですか? 子供に見えないのです。もしかして私やエドワード王太子殿下のように異世界からの転生者なんじゃないでしょうか?」 フィリップ王太子はその後の会話を見ても、振る舞いを見てもとても11歳には見えなかった。 この世界には私が知っているだけで、私と弟の優太と、私を前世で虐め抜いた白川愛が転生している。 「イザベラ、彼は急いで大人にならなければならなかった子です。エドワード王太子やイザベラのように、彼が別人に見えたことはありません。サム国の現国王と王妃は国民の評判が悪く、レイモンド様もサム国の美徳を傷つけるような行いを繰り返し評判は最悪です。その反動か、サム国の国民の期待は全てフィリップ王太子殿下が背負っています。そのような状態が彼が誕生して以来ずっと続いています。。彼は完璧過ぎるほどの振る舞いを、生まれてからずっと求められてきて今の彼になっています。レイモンド様が廃太子となっても、サム国民の王族への不満はまだ溜まったままです。フィリップ王太子殿下は成人すると同時に国王に即位すると思います」 「つまり、王家の評判回復のためにフィリップ王太子殿下は国王に即位するのも早まるということですね。それにしても婚約者指名の後、すぐにレイモンド様が廃太子となってしまい申し訳ないことをしました」 私は幼い子を婚約者に指名すれば、レイモンド様は蜜蜂としての活動をしながら安泰に過ごせると思っていた。 しかし実際は婚約者指名というイベントの割とすぐ後に彼は廃嫡されてしまった。 「イザベラのせいではありません。ルイ国での彼の振る舞いから予想はついていました。彼はすでにあの時点でサム国の王族として人生を詰んでいました。自国の婚約者指名に参加した貴族令嬢たちは、すでに彼が手を出した女性ばかりだったそうですよ。彼に婚約者として選ばれなかった時点で、彼の今までの行いを明らかにする令嬢が出てくるのは当然です。今、彼は海路でレオハード帝国に渡っているそうです。帝国は世界一男尊女卑が激しい場所です。そして、身分よりも財産を重んじる部分が他国よりも強いです。優秀な彼なのことですから、すぐに実業家として成功して蜜蜂としての仕事と兼業するのではないでしょうか?」 私の髪を撫でながら話してくるサイラス様は、どこまでのことが分かっていたのだろう。 レイモンド様が王太子という地位があるうちに、サム国にはメリットがない平和同盟に参加させた。 しかし、自国に戻ったら彼が地位を失うことは予想できてたということだ。 「サイラス様は何もかもお見通しだったのですね。私は彼が女性が好きと言いながら、女性を憎んでいることしか分かりませんでした。サム国の国王陛下と王妃様はなぜ評判が悪いのですか?」 「現在の王妃様は国王陛下の亡くなったお兄様の婚約者だったのです。サム国は王位の長子相続をしているので、当然王位は現国王陛下のお兄様がつく予定でその婚約者として彼女は王妃教育を受けていました。そして、国王陛下のお兄様が亡くなった時に一緒に馬車に乗っていたのが、現国王陛下の婚約者だったのです。2人が亡くなって、現国王陛下は王妃教育を既に終了している兄の婚約者と結婚しました。結婚して割と早めにレイモンド様が生まれています。別に早過ぎるわけではありませんが、国王陛下の金髪を受け継がなかったことで国民に疑問が生まれました。レイモンド様は亡くなったお兄様の子なのではないかということです」 「それは、王妃様が婚前交渉をしたと疑っているのと同じことですよね?とんでもない侮辱ではないですか?」 貞操を何より重んじ女性の権利が大切にされると言われている国の王妃様が、赤子の生まれた月が少し早まったくらいでそんな無礼な疑いを掛けられるなんて信じがたいことだ。 「イザベラのいう通りです。王妃様が黒髪なので、それを受け継いだだけだと考えるのが普通です。その上、王妃教育を終了している彼女を王妃に据える選択をしたのも当然なのです。それでも、貞操観念の強いサム国の国民は王族には特に厳しい貞操観念を求めます。少しの疑いがある行動も許せないのです。レイモンド様は立太子される際に屈辱とも言える国王の血を継いでいるかの検査をされています。おそらく、彼の女性嫌いは母親がそのような検査をしないよう守ってくれなかったことから来るのではないかと思います。サム国の王家に求められる厳しい正しさに反発するように彼は女遊びが激しくなっていった感じがしました」 「サイラス様はいつも、その人がどうしてそういう人になったかを考えるのですね。私はその話を聞いて、王妃様が一番の被害者だと思いました。レイモンド様が立太子したということは血筋に問題はなかったのですよね。あらぬ疑いをかけられて子供を検査しなくてはならなくて、結局潔白だったのです。どれだけ傷ついたことか」 「イザベラの言う通りです。王妃様はレイモンド様が立太子してから3年程表舞台に出ませんでした。レイモンド様を傷つけるような検査をしたことに彼女も傷ついていたのだと思います。それでも、疑われるような行動をとる方が悪いと王族に完璧を求めてしまうのがサム国なのです。一点の曇りもないフィリップ王太子殿下だけがサム国の正当な王族とまで言う国民もいます」 私はフィリップ王太子殿下は辛くないのか心配になった。 生まれてから今までずっと気を抜かず過ごしてきただろうに、これからも一生厳しい監視の中で生きなければならないのだ。 「イザベラ、そういえばレイモンド様に特になにもされなかったように言っていたのに、まつ毛を触られたり嫌なことされてましたね。嫌なことや辛いことがあれば私に言ってください。それと、最近眠れていないのではないですか? 前世の怖い夢をまだ見ていますか? 王妃になることで不安があったりしますか?なんでも言ってください、私がイザベラにできることは何でもしたいのです」
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