第七話 ブラッディ・ゼリーは誰の味?

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 白く細い指が差すのは、真っ赤なゼリーが入った透明のカップだ。  柘榴と野苺のシロップを使ったゼリーが二層になり、表面には柘榴の粒と野苺が乗り、その上には白い生クリームがたっぷり絞られていた。  十月も半ばになった今は、ハロウィン用の飾りで、黒いコウモリ型のブラックチョコレートがちょこんと刺さっている。赤い色を血に見立てて、『ザクロのブラッディ・ゼリー』とこの時期だけの名称がついていた。  他にも、長方形のチョコレートケーキをビターチョコレートでコーティングして、上に金色の十字架を乗せた『チョコレート棺桶(コフィン)』。  紫芋で作られたペーストが鮮やかなモンブランの『ゾンビのブレインモンブラン』。  それから、小さなカボチャ型の容器に入ったパンプキンプリンの『ジャック・オー・プティング』。プリンの上に乗ったチョコレートのカボチャおばけが、小さな青い炎と共にゆらゆらとダンスを踊る魔法がかかっており、見て楽しく食べて美味しい仕様になっている。 「ブラッディ・ゼリーを一つ」 「かしこまりました」 「ここで食べていくことはできるのかな?」 「はい。よろしければ、無料で紅茶かコーヒーをお出ししておりますが、どちらになさいますか?」 「そうだね。それじゃあ、紅茶で」  イートインスペースのテーブルについた青年は、優雅に足を組む。その一連の動作も実に絵になっていた。  スグリは見惚れそうになる前に、ブラッディ・ゼリーをショーケースから取り出し、お盆に乗せ、スプーンを添えて彼の前に置く。 「紅茶をお持ちしますので、しばらくお待ちください」 「ありがとう」  綺麗な笑顔を浮かべる青年に一礼し、スグリはそそくさとキッチンの方へと向かった。  緊張していたスグリは、その背に強い視線が注がれていることに気づかない。 「……あの子が、『赤橙ざくろ』の姪か」  青年の唇が妖しく弧を描いたことにもまた、スグリは気づくことは無かった。 *** 10月の期間限定メニュー *** ★チョコレート棺桶★  棺桶の蓋になっているコーティング部分が動いて、ホワイトチョコレートでできた白い手が出てくるよ! ちょっぴりホラーな雰囲気を楽しみたい人におススメ! ◆ゾンビのブレインモンブラン◆  中には白い脳髄……じゃなくて、白いさくさくのメレンゲ菓子が入っているよ! 食べるとゾンビっぽく……ならないから安心して食べてね!
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