14人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
白く細い指が差すのは、真っ赤なゼリーが入った透明のカップだ。
柘榴と野苺のシロップを使ったゼリーが二層になり、表面には柘榴の粒と野苺が乗り、その上には白い生クリームがたっぷり絞られていた。
十月も半ばになった今は、ハロウィン用の飾りで、黒いコウモリ型のブラックチョコレートがちょこんと刺さっている。赤い色を血に見立てて、『ザクロのブラッディ・ゼリー』とこの時期だけの名称がついていた。
他にも、長方形のチョコレートケーキをビターチョコレートでコーティングして、上に金色の十字架を乗せた『チョコレート棺桶』。
紫芋で作られたペーストが鮮やかなモンブランの『ゾンビのブレインモンブラン』。
それから、小さなカボチャ型の容器に入ったパンプキンプリンの『ジャック・オー・プティング』。プリンの上に乗ったチョコレートのカボチャおばけが、小さな青い炎と共にゆらゆらとダンスを踊る魔法がかかっており、見て楽しく食べて美味しい仕様になっている。
「ブラッディ・ゼリーを一つ」
「かしこまりました」
「ここで食べていくことはできるのかな?」
「はい。よろしければ、無料で紅茶かコーヒーをお出ししておりますが、どちらになさいますか?」
「そうだね。それじゃあ、紅茶で」
イートインスペースのテーブルについた青年は、優雅に足を組む。その一連の動作も実に絵になっていた。
スグリは見惚れそうになる前に、ブラッディ・ゼリーをショーケースから取り出し、お盆に乗せ、スプーンを添えて彼の前に置く。
「紅茶をお持ちしますので、しばらくお待ちください」
「ありがとう」
綺麗な笑顔を浮かべる青年に一礼し、スグリはそそくさとキッチンの方へと向かった。
緊張していたスグリは、その背に強い視線が注がれていることに気づかない。
「……あの子が、『赤橙ざくろ』の姪か」
青年の唇が妖しく弧を描いたことにもまた、スグリは気づくことは無かった。
*** 10月の期間限定メニュー ***
★チョコレート棺桶★
棺桶の蓋になっているコーティング部分が動いて、ホワイトチョコレートでできた白い手が出てくるよ! ちょっぴりホラーな雰囲気を楽しみたい人におススメ!
◆ゾンビのブレインモンブラン◆
中には白い脳髄……じゃなくて、白いさくさくのメレンゲ菓子が入っているよ! 食べるとゾンビっぽく……ならないから安心して食べてね!
最初のコメントを投稿しよう!