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2.不思議な勘違いをする皇帝。
「エレナ、そういえばラキアス先皇陛下は消息が不明になっていますがどこに行ったかわかりますか?」
レナードが私を抱き寄せながらエレナに聞いた。
そういえば、アラン皇帝が誕生すると同時にラキアス先皇陛下は消息が分からなくなっている。
「彼は1人になりたいということなので、旅に出ました。元々、人付き合いの苦手な内向的な性格の方です。ステラ皇后に目をつけられたが為に精神朦朧状態で皇帝となり、とんでもない天才の息子に早く皇位を譲りたいのをよく我慢していたと思います。アランが父上は母上をまだ愛しているから、自分が架け橋となって仲をとりもちたいとか大いなる勘違いをしていました。アランの勘違いを解き、先皇陛下の希望通り自由になって頂きました」
「アラン皇帝陛下は飛び抜けた知能で人の心を察しているのではないのですか?何だか不思議な勘違いをするのですね」
私は何だかアラン皇帝陛下が結構アンバランスな不思議な方に思えてならなかった。
アラン皇帝陛下は人の欲する言葉を与えることで、周りの人間全てから好かれるというあり得ないような状態を作れる方だ。
「彼は身近な人間以外は客観的に見れるのですが、身近な人間に関しては願望を元にストーリーを作り上げてしまいます。未だ自分はライオット皇子より劣った存在だが、血筋が良いため皇帝になるしかなかった。その上、顔が可愛いがために絶世の美女である私に惚れられてしまった。彼女の希望を叶えるために世界征服しよう。今までの流れをそのように捉えています。先皇陛下が皇后陛下に手紙を送り続けたことで、父親が母親を思い続けているといった勘違いをまたしていました。ずっと、思い続けていたのは皇后陛下の方です。皇后陛下は愛する彼がライオット皇子を自分の子供と認めたことでプライドが傷つき彼と会えませんでした。しかし、アランが生まれたことで子供と合わせる名目で彼と会えるようになりました。その会っているときに、ある植物から抽出したお茶をいつも出しています。私はそのお茶が怪しいと思っています。実はアランを産んでくれたお礼を皇宮を立ち去るステラ皇后にするついでに、お茶について尋問したのですが何もおっしゃってくださりませんでした。ラキアス先皇陛下を朦朧状態から一番救いたかったのは、ステラ皇后のような気がします。しかし、プライドが邪魔して彼を好きなことを素直に言えず、彼を朦朧状態から救っても振り向いてもらえなかったのでむくれて何も教えてくれません。アランの母親でなければ、拷問して口を割らせたのに残念です」
エレナは洗脳や暗殺や拷問といった怖い言葉をたまに使う。
でも、私たちの前での彼女は愛らしくて甘えん坊なところさえある子だ。
「ミリア、本当に強くなりましたね。以前のミリアなら、きっと皇后陛下の愛が通じなかったことに同情して彼女の幸せを祈ってしまっていたでしょう。私やエレナの為に強くなったあなたが素敵です」
レナードが愛おしそうに私を見つめてくる。
彼のいう通りだ。
以前の私ならば姉が一途に想い続けた相手がいるなら想いが通じることを願い彼女の幸せを願っていただろう。
「本当に私を大切にしてくれる人たちと、私が愛したい人たちにやっと気がつけたのです。遅すぎたぐらいです」
私はレナードとエレナを見つめながら微笑んだ。
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