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3.夢見る少女の血が混じっているようです。
「エレナ、では親子の愛が魅了の力をといたのではなかったのですね」
レナードがエレナに笑いかけながら言うとエレナは照れたような顔になった。
「そうですね。私もアランのことが言えませんね。愛の力が呪いを解くようなことに憧れてしまってたのかも知れません。私にもお母様の夢見る少女の血が混じっているようです」
エレナもレナードも私のことを夢見る少女のようだとよく言うが私は自分が現実主義だと今でも思っている。
「それから、エレナに実は聞きたかったことがあります。エレノア公女の偽物はエレナが用意したものですか?」
レナードの言葉に驚いた。
エレノア公女と言えばカルマン公子の娘で紫色の瞳をした女の子で、今年10歳になったはずだ。
「違います。あの子は本物のカルマン公女がいなくなったのを隠すために、カルマン公爵家が用意した替え玉です。よく、気がつきましたね。さすがお父様です。お母様6年前に街で彼女と会った日を覚えてますか?あの日の夜に私は彼女をサム国に逃しました。彼女は4歳にも関わらず、誰にも期待しない死んだ目をしていたからです。私は2つの可能性を考えました。1つは私と同じで前世の記憶があって、今世は詰んだと思い捨てていること。2つ目は厳しい虐待にあり誰にも期待できなくなっていること」
エレナと6年前、街に買い物に行った時カルマン公子の横にいた紫色の瞳に紫陽花色の髪の毛をした少女を思い出した。
じっとおもちゃ屋を見つめていて、欲しいものも買ってもらえないということは魅了の力を使えないのだろうと思ったものだ。
「待ってください。紫色の瞳をしているのにエレノア公女がカルマン公爵家で虐待されることはないはずです。きっと誰より大切に女王のように育てられているはずですが。もしかして、魅了の力が使えないからですか?」
私は紫色の瞳をした姉が家で一番の決定権を持っていたのを思い出した。
「魅了の力が使えないと思われて、使えることを隠しているのかも疑われて彼女は酷い虐待を受けていました。私は彼女を誘拐した日にカマをかけて魅了の力が使えることを隠しているか聞いたら、その通りだと言っていました。彼女はまだ子供の自分に皇族の子を産むことばかりを話され皇族専属の娼婦になる未来しかないことに絶望し魅了の力を隠したそうです。パン屋になりたいと言っていたので前世の記憶はないですね。現実のパン屋の大変さを知っていたら言えない夢です。朝早いですし世界で10本の指に入る大変な職業です。おもちゃ屋さんを見ていたのも、パン屋になりたいのも4歳らしいですよね。私は彼女の適職である暗殺ギルド入りか、貴族の経験を生かし伯爵家の養女になるかの選択肢を掲示しました。彼女は何が気に入らなかったのか、自分で孤児院に行くと言ってました。結局、隠しきれない高貴さがあったのか慈善事業をしに来ていた侯爵家に貰われ、今ではサム国の王子の婚約者になっています。彼女が人を好きになった時、魅了の力を相手にかけてしまって苦しむと思うので早く魅了の力の問題は解決したいですね」
エレナが6年も前にエレノア公女をカルマン公爵邸から奪還していたことに驚いた。
お母様と比べて監禁されていた訳でもないし、4歳が逃げるわけもないからガードは緩かったとは思うがそれでも1人でそれを行なってしまうところがすごい。
家に全然帰ってこない間、エレナはアラン皇帝陛下を育て直ししていただけではなかったようだ。
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