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4.このまま溶けてしまいたい。
「エレノア公女は偽物だとなぜレナードは思ったのですか?」
私は私だけ現状をしっかり理解できていないようで不安になった。
「エレノア公女は正妻の子ということになっていますが、実はメイドの子であるのではないかという噂が常にありました」
レナードの言葉にハッとする。
「確かにカルマン公子の正妻のかたはお腹が大きい時がありませんでしたね。てっきり、私と違い背が高いかと思っておりました」
私が言った言葉にレナードとエレナが顔を見合わせる。
エレナが笑いを堪えているのか、震え出す。
私は何一つ面白いことを言っていないのになぜだろうか。
「妊娠中は背が高くてもお腹がでますよ。大木のように大きな女では別ですが。みんなエレノア公女が正妻の子であるという事実を疑いながらもカルマン公爵家の主張だから受け止めていたわけです。彼女の母親はメイドで彼女が生まれてすぐに殺されています。彼女は紫色の瞳をしていますが、少し赤みがかっています。サム国で帝国の皇族の血を疑われたら、これは紫陽花色の母親譲りの瞳の色だと言うと言っていました。私はエレノア公女にも先皇陛下にも紫色の瞳を隠すためのグッズを渡そうとしました。エレノア公女からはいらないと断られ、先皇陛下はありがたいと受け取ったと思ったら、出発の日に持っていくのを忘れていきました。なかなか思う通りにはいかないものですね」
エレナの言葉に私のお母様も監禁されず殺されていた可能性があったのだと身震いした。
震えている私に気がついたようにレナードが、私をもっと抱き寄せる。
「エレナはサム国にゆかりでもあるのですか? お義母様を連れて行ったのもサム国でしたよね」
レナードの疑問は私も思っていた事だった、エレナは人を逃す時にサム国を選択しているように思う。
「私が前回の生を得たのがサム国です。サム国には私の創った暗殺ギルドがまだ存在していて、その長は私の事情を知っているので、対象の危険を守ってもらえることもできます。私はサム国では3回生まれていて、帝国より女性や孤児が生きやすい国だと認識しています。アランの世界征服計画に一番難敵として立ちはだかると思います。サム国は国民の暮らしの満足度も高く、資源も豊富で帝国に従属する理由が見つかりませんから」
エレナのように私も何度も生を繰り返しているのかも知れない。
しかし、彼女のように覚えているわけではない。
「エスパルのレオという子のの情報を集められると言うことはエスパルに生まれたこともあるの?」
私はエレナがエスパルという閉鎖された独裁国家の情報を集められたことが不思議だった。
もしかしたら、エスパルにも彼女の組織が存在するのかと思ったのだ。
「私は一度だけエスパルに生まれたことがありますが、洗脳技術を獲得する前だったため6歳で死にました。レオの情報を集めてるのは、本当にお父様譲りの欲しいものを手にいれるための熱意です」
エレナがレナードを笑顔で見つめている。
2人とも本当に絵画のように美しくて見惚れてしまう。
そういえばレナードは私を手に入れるために頑張ってくれたと言っていた。
「レナードの欲しいものは私ですか? もう手に入ってますよね。他に欲しいものはありますか?」
私はレナードに問いかけた。
彼が欲しいものがあるのなら与えてあげたいと思ったからだ。
「手に入っているとはとても思えないほど、私はいつも不安です。ミリア、あなたが私のものだという証が欲しいです」
レナードが私の唇をなぞりながら魅惑的な瞳で見つめてきてクラクラする。
彼の瞳に吸い込まれてこのまま溶けてしまいたい。
もう何もかも彼に受け渡しているのに、これ以上何を与えれば良いのだろう。
「すみません、それです。10歳のレオには刺激が強いと思います。レナードとミリアの愛の劇場の開催は私には楽しみですが、レオはどうだかわかりません!」
エレナの言葉にハッとしてレナードを見ると笑顔で返された。
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