5.恋をさせてそれを利用しようってことなの?

1/1
前へ
/28ページ
次へ

5.恋をさせてそれを利用しようってことなの?

「帝国の要職試験ですが、私はレオの母親を宰相にすることにしました。明日朝、問題児と噂の長男ダンテをアカデミーに迎えにいきます。おそらく彼は私と似たタイプだと思われます。しかし、他人を困らせて喜ぶような幼稚な側面を持ち合わせております。エスパルでの行動を見るに、相当な女好きです。私に惚れさせて意のままに操ろうと思ってます」 久しぶりにエレナが家に帰ってきて喜ぶことも束の間だった。 「待って、恋をさせてそれを利用しようってことなの?そんなことをしなくても良いのよ」 エレナはやはりレナードと似ている。 レナードも自分のルックスを武器に、女の恋心を利用していると言っていた。 「私の美しさは両親から受け継いだ最大の武器です。利用して目的を達成してきます」 エレナはそういうと立ち去っていった。 私はエレナから受けついた事業の仕事を終えると、皇宮で働いているレナードの元に急いだ。 今日は皇宮で勤務の彼と一緒にランチをする約束をしているのだ。 本当は早足などはしたないけれど、早くレナードに会いたくてはやる気持ちを抑えられなかった。 「あっ申し訳ございません⋯⋯」 誰かにぶつかって、飛ばされて尻餅をついてしまった恥ずかしい。 「大丈夫ですか、ものすごく可愛いですけれど、どなたでしょうか?」 水色の髪に水色の瞳、これはエスパルの人の特徴だ。 すらっと長身に爽やかな男性が私を抱き上げて起こそうとしている。 「おやめください。はしたない所を見せてしまい申し訳ございません。ミリア・アーデンと申します」 私は自分で起きあがり、目の前の男性に挨拶した。 「え、もしかしてエレナ様のお母様ですか? すごい可愛い、全然いけるんですけど!」 彼はそんな軽い言葉をかけてくる。 普段そんな言い方をされることがない私は戸惑ってしまう。 「あの、失礼ですがどなた様でしょうか?」 正直、帝国の体制が急に変わり皇宮内にも知らない顔が増えた。 「ダンテ・スモアと申します。エレナ様の補佐官を本日よりさせて頂いております」 彼は優雅に挨拶をしてきた。 問題児とエレナが言っていたレオのお兄様だ。 エレナが彼を補佐官に任命したということは、やはり彼も優秀だということだ。 そういえば、レオの母親を宰相にするにあたり伯爵位は必要だと言うことで与えたと言っていた。 「娘がお世話になります。母親の私が言うのも恐縮ですが、1人で抱え込んでしまうところがある子なので支えていただけるとありがたいです」 エレナを支えてくれる人が現れたと言うことが嬉しくて、私は彼にエレナの助けになって欲しいと思った。 弱みを決して見せてくれない娘の弱さを支えてくれる人が、現れたのならこれ以上嬉しいことはない。 「本当に可愛いな。こんな魅力的なのに人妻なんて悪い女性ですね」 彼は突然、私の頬に手を添え唇に手をかけてきた。 確か、彼はアラン皇帝と同じ12歳だったはずだ。 背丈が高くてとても12歳には見えない。 私を揶揄っているのだろうが、私はこういったものが得意ではない。 帝国の貴族たちはこう言った揶揄い方をしないから、慣れていなくて焦って怖くなった。 「娘がお世話になっております。妻と約束がありますので、ここで失礼させていただきます」 レナードが現れて、ダンテ様の手首を掴んでいる。 そんな失礼な真似をするなんてレナードらしくない。 「エレナ様のお父様ですね。ダンテ・スモアと申します。今後ともよろしくお願いします」 そう言うと爽やかで不思議な青年は去っていった。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

160人が本棚に入れています
本棚に追加