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***
母親の再婚相手は、車に撥ねられて死んだ。
しかし彼女はレアに似て美人だったこともあって、すぐに次の男を捕まえることに成功。その男もレアに興味を持つ変態だったので、僕はそいつは食中毒で殺すことにしたのだった。
その次の男は、工事現場の木材の下敷きにしてやった。
その次の男は酔っ払いに殴り殺されるように仕向けてやった。
そんなことを繰り返せば、さすがに母親も何かがおかしいと気づいたのだろう。もしくは諦めに至ったのか。十人以上“再婚相手”もしくは“再婚予定の相手”が死んだところで手を止めた。これでやっと、レアは幸せになれるはずだと僕は思った。
しかし。
「久しぶり、レア。……って、どうして泣いているの!?」
十一歳になったレアは女の子の恰好をしていなかったが、庶民の子供にしては妙にきらびやかな服を着ていた。そして何より、石碑の前で声を殺して泣いている。
僕の姿を見た彼は、ああリイン、と呻くように言ったのだった。
「久しぶり、リイン。……俺、呪われてるのかなあ」
「の、呪われてるって」
「母さんの恋人が次々死ぬんだ。母さんはそれは俺のせいだ、俺が呪われてるからだって言うんだよ。お前のせいで、金づるも愛してくれる男もいなくなった、どうしてくれるんだって」
「そ、そんな……!」
まさかそんな、と僕は絶句するしかない。僕が男達を殺したせいで、レアがそのような疑いをかけられるなんて思ってもみなかったからだ。
「俺、売られるんだ、もうすぐ。……俺みたいな顔の男の子は“需要”があるんだって話。そこに行ったら俺はずっと……ずっと屋敷に閉じ込められて、オッサンたちの相手をさせられるんだって」
ふざけるな。僕は唇を噛みしめた。何がどうして、そんな馬鹿げた話になるのか。
自分は間違っていたのかもしれない。諸悪の根源は父親ではなく、母親の方だったのではなかろうか。腹を痛めて産んだ我が子ならば、可愛くないはずがない。愛していないはずがない。そんな風に思い込んで、あの女を生かした自分が間違っていたようだ。
――なら、お前のことも殺す。レアを愛さない母親など必要あるものか。
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