水の中に潜むもの

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水の中に潜むもの

夜。 街中にある公園。 少年が噴水のふちに座っていると、物音がした。視力が低いので目を細めて水の中を見ると大きな人の顔があった。 大きな顔が少年に言った。 「私は噴水の妖精です! お喋りしませんか?」 「うん! 今、僕はね。お母さんと喧嘩して家出してきたんだ。晩御飯を食べてないからお腹がぺこぺこだよ」 「私もお腹がすいてて困ってるんです。あはは。あなたは今、一人なの?」 少年はうなずく。 大きな顔がきく。 「もしかして、あなたは目が悪いのですか?」 「うん。眼鏡を家に忘れてきちゃって、困ってるんだ。お顔をよく見たいからもっとこっちに来てくれる?」  顔がゆっくりと噴水の中を動いて、飛び上がった。口を開けて牙を剥き出しにして。その体は魚のものだった。
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